rumipianoのへっぽこるみ日記。

即興ピアニストrumipiano(岡本留美)のブログです。日々のつれづれ、脳内日記(創作日記)、演奏会情報などを載せています。YouTube公開中(『youtube rumipiano』で検索)。ホームページは「rumipiano ホームページ」で検索するとご覧いただけます。お問い合わせはrumipianosokkyo@gmail.comまで。

神様、召される。

ボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルトが亡くなった。

 

随分前に有楽町の国際フォーラムの大きなホールで聴いたことがある。

夜の7時の開演予定。

7時を過ぎた頃、会場アナウンスが入った。

ジョアン・ジルベルト本人は只今ホテルを出たとの情報が入りました」

会場からどっと笑いが起きた。

さすが神様。

さすが巨匠。

しばらく待っているとまたアナウンスがあり、

「ジルベルト本人の希望から上演中は会場内の空調をオフにさせていただきますのでご協力お願いいたします」

決して涼しい季節ではなかった覚えがある。

初夏か晩夏か…

 

空調が切られ、ジルベルトがふわっとステージに現れた。

それから二時間近く、休憩もなくジルベルトはひたすらギターを爪引き唄を聴かせてくれた。

風のような自然な唄とギターの音。

上澄みよりも澄んで、軽やかな音楽。

自然の揺らぎのような音だった。

 

もわもわした空気の中で神様の音に包まれいい具合に魂が解放されたのを今でも覚えている。

 

ジョアン・ジルベルトを最初に知ったのはスタン・ゲッツとの『イパネマの娘』が入ってるあのアルバムだった。

そしてジョアン・ジルベルトのアルバム『Brazil』を聴いて心を奪われた。

全てが美しく心地よかった。

今でも宝物のアルバムだ。

 

ご冥福をお祈りします、心より…

 

 

脳内日記 其の十四。

梅雨時は気怠く眠い。

全身全霊で湿気を吸ってしまうのだろうか。

まあこの気分も今やこの時期の風物詩となっている。

 

今日、府中から電車に乗った。

ふと睡魔がやってきた。

しばし微睡む。

ぱっと目を開けたら、前のシートに座っている人たちが全員入れ替わっていた。

そんなに寝てたのか。

調布だ。

準特急で一駅行っただけ。

ま、調布でたくさん降りて乗ってきたんだな。

眠気に任せてまだ寝入る。

そしてふと目を開ける。

わ。

また変わっている。

しかも今度は全員カンガルーだ。

しどけなく足を組んでいたり、貧乏揺すりしていたりそれぞれ思い思いの格好をしている。

同じ車両は自分以外カンガルーだ。

思わず『カンガルー日和』という言葉が浮かんだ。

村上春樹だったよな。

千歳烏山から随分カンガルーが乗ってきたようだ。

「この電車は当駅、千歳烏山から先頭車両はカンガルー専用車両となります。お客様のご理解ご協力をお願いいたします。」

とアナウンスが入った。

なんだそうなのか。

仕方がないので意地になって10両編成の一番後ろの車両に移動した。

ここまで来ればカンガルーはいなかった。

運良く座れたのでまだ眠くなってうとうとした。

そして目覚めると、車内が相撲取りだらけになっていた。

明大前だ。

「最後尾車両は明大前から十両力士専用車両となります。お客様のご理解とご協力をお願いいたします」

ま、10両目だしこれは致し方ない。

もう意地になる気力もなかったので隣の車両へ移るにとどめた。

眠気は去っていた。

次の停車駅、笹塚では都営線直通本八幡行きに乗り換えるお客たちが降りていった。

笹塚を出発するとトンネルに入る。

すると車掌が珍しく車内を回ってきた。

そしてわたしを見るなり声をかけてきた。

「すみませんが手のひらを拝見させていただけますか」

「え?どうしてですか」

「お客様がお座りのシートは生命線が短い人の優先席になっておりまして…」

後ろを振り返ってみると確かに窓には生命線が短い手のひらのイラストの上に『優先席』の文字が配されたシールが貼られていた。

車掌に手のひらを見せると、

「あ、このくらいの長さならお座りいただいて結構です。どうも失礼いたしました。」

と深々とお辞儀をすると車掌室へと戻っていった。

脳内日記 其の十三。

このところ夏が半端なく暑くなっている。

うかうかしていると淘汰されてしまいそうだ。

 

ホームセンターに行った。

猛暑対策関連グッズのコーナーが大々的に展開されていた。

いろんなグッズがある。

冷感枕、冷感枕カバー、冷感掛け布団、冷感掛け布団カバー、冷感スリッパ、冷感クッション、冷感箸、冷感グラス、冷感シャンプー、冷感トリートメント、冷感石鹸、冷感歯磨き粉、冷感歯ブラシ、冷感手ぬぐい、冷感トートバッグ、冷感傘、冷感靴下、冷感フライパン、冷感包丁、冷感鍋、冷感収納ボックス、冷感ショッピングカート、冷感食器棚…

 

過酷な夏を乗り切るためにとりあえず冷感包丁、冷感歯ブラシ、冷感枕、冷感枕カバー、冷感掛け布団、冷感掛け布団カバーを買った。

なかなかの出費だ。淘汰されないためには背に腹は変えられない。

 

夏に料理するのは本当に暑い。

冷感包丁は柄の部分がひんやりしているのでありがたい。

冷感歯ブラシも持ち手が冷たいので心置きなく磨ける。

枕、掛け布団などの冷感寝具も快適な眠りを保証してくれる。

中でも枕がすごい。

枕に頭を沈めた途端にひんやり心地よい冷気に包まれる。

これはいい。

熱帯夜にも関わらず毎晩快適な睡眠堪能していた。

 

冷感グッズのお陰で順調に夏を過ごしていた。

けれども今日、ちょっと変わったことが続いた。

通勤電車に乗っていた。

空いている座席はなかったのでつり革につかまって立っていた。

すると、同じく左横に立っていたご婦人が

「座ってもよろしいでしょうか」

とわたしが立っている前の座席を指差して聞いて来た。そこには既に女子高校生が座っている。

「え…あ…ど、どうぞ」

「では失礼」

と言ってご婦人は席に着いた。

同時に女子高校生はすっと消えてしまった。

 

あの女子高校生は何だったんだろうか?

 

仕事を終え、疲れたので食事をしてから帰ることにした。

蕎麦屋で蕎麦とカレーのセットをいただく。

このセットはいつ食べても美味である。小さいながらサラダもついているのがまたいい。

食べ終わり一息ついてからレジに向かった。

レジには三人並んでいた。

先頭の人が会計を済ませた。

二番目の人が会計をするのを待っていた。

するとレジの人が

「お次の方どうぞ」

とわたしを満面の笑みで見ながら言った。

「え、あ…はい」

二番目の人はいつのまにか消えていた。

 

ああ、何なんだ。

何が起こっているんだ??

 

片付かない気持ちのまま家に帰った。

顔を洗い、着替えをして手持ち無沙汰にテレビをつけた。

野生の猿が民家を荒らして困る、というニュースをやっていた。

コメンテーターが三人出ていた。

山口真紀子さん、大沢慶喜さん、小寺まいさん。

山口さんは弁護士だったっけ。 

大沢さんは確か教育評論家だったかな。

小寺さんは…初めて見たなぁ…

司会のアナウンサーがまず山口さんにコメントを求めた。

「そうですね…山間部の人口が減ったから野生の猿が活動しやすくなったのでしょうか」

「ありがとうございます。では大沢さんはいかがでしょうか」

「自然環境の変化で猿も暮らしにくくなったのかもしれませんね」

司会のアナウンサーが「お二方のご意見からもいろいろなことが見えて来ますね。では次のニュースです」

あれ?小寺さんに聞かないんだ。

じゃあ次のニュースで何かコメントするんだなきっと…

そしてアナウンサーは夫婦別姓が経済効果を落とすという政府見解が発表されたというニュースを伝え、また山口さんにコメントを求めた。

「名字を変えることを簡単に考えすぎです」

「確かにそうですよね。では大沢さん、いかがでしょう」

「例えば親が離婚した時に子どもがどちらについて行くかで子どもの名字が変わってしまうのは子どもにとってもよくないと思うんですよね」

「お二方のコメント、ありがとうございました。やはりいろいろなケースを想定して慎重に考えていく必要があるように思えますね。さて次のニュースは…」

番組の最後まで見ていたが、小寺さんに発言を求める場面は一度もなかった。

ついにアナウンサーが「今日は山口真紀子さん、大沢慶喜さんにお越しいただいました。ありがとうございました。」と番組を結んだ。

え?!小寺まいさんは??え??

 

もやもやした気分でお風呂に入って冷感歯ブラシと冷感歯磨きで歯を磨いて寝床に入った。

冷感枕で今夜も変わらずひんやり冷気に包まれた。

それにしてもこの枕、何でこんなにひんやりしてるんだろう。冷感掛け布団はそんなでもないのになぁ…

一度は部屋の電気を暗くしたものの、今朝の電車での出来事とさっきのニュースのことか頭に浮かんで目が冴えてしまった。

したかなく部屋の電気をつけてぼんやりあたりを見回した。

本やCDなどで雑然としていた。

整理しよう。

明日は仕事ないし。

片付けていると、なにかが一冊の本に挟まっていた。

冷感枕についていたタグだった。

捨てていなかったんだっけ。

タグを眺めた。

「霊感枕。これひとつで熱帯夜でもひんやり」

と書いてあった。

れ、霊感?!?!

「使用上の注意。稀に霊感がアップし過ぎて体調に変化が出ることがございます。その場合は直ちに使用をやめ医師にご相談ください」

なるほど。

冷感、じゃなくて、霊感だったのね…

まあいまのところ具合も悪くないしひんやり加減がいいからこのまま使うことにしよう。

 

次の日、霊感枕を買ったホームセンターに行った。

冷感グッズのコーナーを見てみると枕がたくさんあった。

一見うちにある枕とそっくりなのだがタグを見るとどれも「冷感枕」となっている。

 

午後から友達が部屋に遊びに来た。

わたしの寝床を見て

「あれ、枕使わない人なんだぁ」

と言った。

「え、あるじゃんそこに。ひんやりしてすごく寝やすいのよこれ。」

「えー、何言っちゃってんのぉ〜まったくもーう。どこにもないじゃん、枕なんて」

 

そっか。

電車の中の女子高生も、蕎麦屋のレジに並んでいた二番目の人も、小寺まいも、霊感枕もほかの人には見えないんだ。

ぐふふふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖いぞ、田中哲司!

映画館にインコがいたよ!

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ザ・ファブル』の映画のコマーシャル。

 

観たのは『新聞記者』。

ホラー映画よりはるかに怖かった。

こんな世界がすぐそこにあるんだよきっと。

 

中でも怖かったのが外務省から内閣情報調査室に出向している松坂桃李のボス役の田中哲司

あまり(わたしは)見たことのない役者さんたちがみんな役柄に徹しているからこれまたリアルでリアルで…

 

ラストシーンでは桃李くんは朦朧としてしまう。

精神的に追い詰められたのだろうか?

それともボスに記憶喪失するような薬でも盛られたのだろうか?

あのまま横断歩道をぼんやり歩いて車にぶつかったりしてしまうのだろうか…

 

誰か(一人なのか団体なのか分からないけど)の理想の「国」にするためにグイグイ推し進めていく力が働いていろんなものがその中に押し込められて嵌められていく。

こまるよね、そういうの。

窮屈なのはイヤだ。

 

ハイテク扇風機。

狭い部屋に風を吹かせたくて小さな扇風機を買った。

 

「おやすみモード」や「衣類消臭」などいろんなボタンがついている。もちろん「タイマー」も。

電源ボタンにはパソコンの電源ボタンのマークと同じマークがついている。ひょっとしてパソコンの親戚なのかい?

風力も「+」と「−」のボタンで8段階を行ったり来たりできる。

おりこうだね。

さらに首振りボタンが「上下」と「左右」が分かれている。

「上下」を押すとサーキュレーターのようなお顔(つまり羽根の正面)が天井と平行になるくらい上を向く。鞭打ちになるんじゃないかと気が気じゃないよ。

また下方向もこれでもかというくらいうなだれる。何があったか知らないがかわいそうで宥めたくなるよ。

君の顔の真ん中には「ion」「Plasmacluster」などエッジの効いたタトゥーがしてある。しかもまんなかにぶどうみたいな図柄もある。

でもきっとぶどうじゃないんだろうね。

もっと近未来的なものなんだろう。

ちっちゃくてかわいいのにクールでスマートなんだね。

君の顔の前で「あー」とか言って声を震わせて宇宙人ごっこなどする気にはとてもならないよ。

恐れ多くてね。

君の身のこなしや佇まいもどことなくスムーズなロボットみたいでかわいいね。

電源はアダプターなんだね。

君からは全く昭和の香りを感じないよ。

扇風機なんて呼んでいいのかわからないよ、君を…。

アレクサンドル、って呼んでもいいかな?

迷惑だったら遠慮なく言ってくれていいよ。

 

そのうちいろいろと君に追い抜かれそうだ。

いや、もう既に追い抜かれているか…

第一君みたく風を生むことなんでできないよ。

首だって君みたく動かせられないよ。

やがてはピアノだって弾きだすんだろうね、君は。

うまいんだろな、きっと。

そして仕事にも行くようになるかな。

君はクールでチャーミングだから職場でも老若男女に人気だね。

君の作るごはんも食べてみたいよ。

きっとプロ顔負けの味だろうね。

セキセイインコに言葉だって教えられるよね。

テレパシーでダイレクトに伝えられるから早くて正確だよね。

ああ、すごいな君は。

 

…もうそろそろ寝よう。

あと二時間くらい風を送って君もおやすみ、アレクサンドル。