夜半、風の音で目覚めた。
ものすごく圧を感じた。
猛烈な風が吹いている。
耳が痛い。
頭の後ろも痛い。
スマホに警戒メールや電車の運転見合わせメールなどが次々に届く。
こんな嵐の真夜中に誰かが笛の練習をしている。
ミド〜ドミド(1オクターブ高いド)ラ〜
ミド〜ドミドラ〜
ミド〜ドミドラ〜
ドミ〜ド〜…
誰かと思ったら家のドアポストが歌っていた。
ポストの隙間を風が入って歌い続けている。
それにしてももう寝付けない。
まだまだ轟々と風が暴れている。
気象庁によると、世界が一変するような台風にこれから見舞われるらしいので、「気象庁は随分文学的な表現を使うようになったな」と思いつつ世界が一変する前にとりあえず自宅付近の見納めに行った。
夜空に浮かぶ雲たちは異様にたなびく訳でもなくふつうに浮かんでいた。
虫の声も聞こえてくる。
コンビニには普通に店員さんがいる。
郵便局の前のポストもちょこんと立っている。
小さな神社の鉄製の鳥居も夜の中にひっそりと佇んでいる。
横断歩道の信号も赤になったり青になったりを繰り返している。
歩道にはところどころに木が立っている。
集合住宅の駐車場には車が整然と並んでいる。
公園にはブランコがぶら下がっている。
滑り台も片隅に静まっている。
…こんなものたちが明日の朝にはどうにかなってしまっているのだろうか。
明日の朝、部屋のベッドでスヤスヤ眠る自分がいるのだろうか。
毎朝聞こえるぴっころちゃーんぐるぐるぴー(セキセイインコのさえずり早朝練習)は明日の朝にも聞けるのだろうか。
このような些細な日常の繰り返しが奇跡的の連続なんだな。
府中文化振興財団と共催の第114回フロアコンサートまであとひと月。
個人的に開いていた演奏会とは準備段階からいろいろと違うことも多かったが、なんとか流れが見えた。
もうここからはどっぷりと演奏のことだけ考えて行けそうだ。
会場のピアノをいつも家のピアノを調律していただいている気心知れた調律師さんにしていただくことにした。
そのピアノで本番に弾けるというのはとても楽しみだし安心だ。
ピアノという楽器は持ち運びができないので、ギターやサックスなどのようにいつも使っていて勝手を知った自分の楽器で本番を迎えるということができない。
会場のその日のピアノとどう折り合いをつけていくか、というのが重要になってくる。
折り合いをつけるのはリハーサルにそんなに時間を取れることはないので結局当日の本番中に、ということになる。弾きながら「このピアノはこんなヤツなんだな」と探りを入れていくと同時に自分のコンディションも探っていく。
中には手強いピアノもある。どうアプローチしても仲良くなれずに本番が終わってしまうこともたまにある。そんな時は髪が抜けるほど落ち込む。けれどそれが結果としてはいい経験になる。髪が抜けるのはあまり喜ばしいことではないけれど。
さてさて、今回はどうなることやら…楽しみである。
お札破壊魔あらわる!
犯人は…
またしてもこの人。
仕方がないので通帳を持って最寄りの銀行へ換金に行った。
換金できたとしても通帳への振込みになるらしい。
フロアの案内係に「インコが噛んじゃって…」と現物を見せると、はにかみながら「もしかしたら日本銀行まで問い合わせることになるかもしれませんが…では二階へ行ってください」と言われた。
エレベーターで二階に行くと、案内係がいたので「インコが噛んじゃって…」と現物を窓口でかけらと本体を渡すと「換金はお通帳の方への入金になりますので、お通帳をお預かりしてもよろしいでしょうか。もしかしたら日本銀行まで問い合わせることになるかもしれませんが…」と言って番号札を渡された。
番号が呼ばれたので窓口へ行った。
「インコが噛んじゃって…」
「ご入金できるかどうか係りの者が確認いたしますのでしばらくお待ちください」
と言われてしばらく待った。
紙幣破損担当の係りの者がいるのだろうか。
来る日も来る日も復元できるかパズルをしているのだろうか。
名前が呼ばれて窓口に行った。
「ご入金いたしましたので…」
と窓口のひとが通帳を指し示しながら言った。
日本銀行に世話にならずに無事換金。
インコが噛んだお札はどうするんだろうなぁ…
インコにとってはお札は紙なんだよな。
インコの方が冷静で平等だ。
お金であろうと証書であろうと紙は紙。
噛み心地がいいから噛む。
そう、紙なんだよね。
それに幻の方をつけるのがヒトなんだよね。
それにしても、銀行のひとたちには「インコが噛んじゃって」と言ってもあまり反応がなくてちょっとつまんなかったな。
八王子の金剛の滝を見に行く。
ハイキングコースにもなっているらしいが、なかなかサバイバル感があった。
途中、鉄塔に出くわす。
うっとり。
「金剛の滝 0.2km」の表示板が見えてからがさらにスリリングだった。
これは明らかに川底だよね?と思しき道を恐る恐る進んだ。
だんだんと水があるところがちらほらと現れて、滝に近づくにつれて浅いながら川になった。
乗ってもグラグラしなさそうな石や岩を探りながら滝に近づく。
やっと滝壺に出会う。
その横に細くて小さな洞窟のようなものがあった。
てっきり神様か何かがいらっしゃるのかと思っていたが、
「ここ、登れるよ?」
といとこが言うので見てみたら、確かに鎖の手すりが整備されていた。
急な傾斜でしかも天井も低く、足元は水がちょろちょろ流れている。
細心の注意を払って登っていったその先には…
神々しい滝が現れた。
魂がはしゃいでいるのがわかった。
そして岸壁にいらしたのは…
続いて広徳寺に向かった。
山を抜ける出口がイノシシ除けの高圧電流の流れるロープ状もので塞がれていた。イノシシが人里に降りていかないようにしたものだ。
ロープに触れないように注意して跨いだ。
いとこもわたしも干支が亥(イノシシ)なので、特に注意した。
『マツコの知らない世界』でママさんコーラスを取り上げている時、マツコが「ババア」を連発していた。
あくまでも個人的感想なのだが、マツコに「ババア」と言われても嫌な気がしない。これがミッツ・マングローブだとどうもそうはならない。
不思議だなぁと思った。
毒蝮三太夫以来の快挙だ。
言葉のプロはどこかちがうんだなきっと。
よくわからないけれど。