rumipianoのへっぽこるみ日記。

即興ピアニストrumipiano(岡本留美)のブログです。日々のつれづれ、脳内日記(創作日記)、演奏会情報などを載せています。YouTube公開中(『youtube rumipiano』で検索)。ホームページは「rumipiano ホームページ」で検索するとご覧いただけます。お問い合わせはrumipianosokkyo@gmail.comまで。

ベーゼンこわい。

短大の同期と定期的に勉強会をしている。卒業した後から始まった。もう50回近くになる。縁だなぁとありがたく思う。

つい先日も勉強会があった。場所は虎ノ門のB-tech。ベーゼンドルファーショールーム。メインテナンスも行なっている。

虎ノ門にもベーゼンにはあまり馴染みがない。ベーゼンは幾度か触ったことがあったが、「なんかこわいなぁ」というイメージかあった。

さて、会場にあったのはどうやらインペリアルというピアノだったらしい。おっきなフルコン。インペリアル…名前からして威厳があるというかわたしなんかは簡単に威圧される。普通のピアノは大概鍵盤の数は88鍵だが、このインペリアルは低音部に黒鍵も白鍵も真っ黒な鍵盤がいくつか付いていて全部で97鍵ある。

恐る恐る黒い鍵盤を弾いてみる。

どろろろろんとものすごい唸りがした。猛獣でも踏んでしまったのかと思った。空飛ぶ軍用機のような音。さっそくどやされる。

 

勉強会ではひとりひとり弾いたり歌ったりする。自分の番がきた。

ピアノの前に座るとベーゼンが語りかけてくる。

「なんぼのもんじゃい、われえ」

おどけてかわそうとするが左肩の付け根から指先までが満遍なくガクガク震えてきた。今までに経験したことのないものすごい震えだ。何かの病気かはたまた憑依現象か。こんなことは全くもって生まれて初めてだ。

「おさまらないかなぁ」と弾きながら思うものの、一向におさまらない。おそろしやぁ。それでも「中断する」という選択肢はなぜか自分の中にはなかった。震えながらもどうにか一曲弾き終わった。それでもまだ震えている。そのあと即興をやるもまるでへなちょこだった。

自分の番がなんとか終わり、放心状態で席に着いた。そのあとは重たい眠気がきた。ちょっとしたショック状態なのだろうか、我ながらかわいそうに思った。ほかのみんなは平気そうに弾いている。こわくないのかなぁ。

メンバー全員が一通り弾き終わり、時間があったので二周目に突入した。再び自分の番がきた。今度はからだをガチガチに固めて息を詰めるように弾いたらなんとか弾けた。苦しい弾き方で全然音を味わえない。

 

触れるとぽーんと鳴ってくれるスタインウェイとは全く別人だった。まあもともと別人だから仕方ないんだけど。

ベーゼンは厳格で厳粛なタイプ、スタインウェイはこだわりのある遊び人タイプ…などとタイプ分けして自分を慰めてみた。それでもあの震えの恐怖感はなかなか離れない。トラウマにならないといい。虎ノ門でトラウマになる…声に出して言ってみるとなかなか味わいがある。

ちなみにわたしの狭い居室兼防音室で毎晩添い寝をしているのはボストンというピアノ。蓋を開けると流れるような字体でBostonと書いてある。ベビーグランドである。ベビーなのにグランド。宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』の「ぼう」のようなもの、といったらよいか。

「たらよいか」…どんないかだろう。なんだかおいしそう。そう、いかって人の顔を覚えるくらいの知性があるんだってね。ん?たこだったかな?どちらも頭良さそうだもんね。宇宙的な感じがするし。宇宙といえば…セキセイインコは宇宙人のおみやげだとか。確かに不思議なデザインよね、とくにお顔が。おひげみたいなのがあったり、おはなとおくちばしのところがハートマークみたいだったり。しかもとってもいい匂い。そのうえおしゃべりを真似したりアレンジしたりするのよね。巻き舌だってマネするし。ぐるぐるひとりごとを言っているときはきっと宇宙と交信しているのかもね。邪魔しないようにしなくちゃ。

閑話休題。さてそのボストン、多少はスタインウェイの血を引いているらしい。デザインはスタインウェイで製造はカワイ。限られたスペースと限られた予算に見合うグランドピアノでなるべくいい音がしそうなものを調律さんと選んで連れてきてピアノだ。まだ3歳児くらいなのだが、ふと色っぽいとろりんとした音を出す時がある。何時間か弾いた後でね。

 

こわくないベーゼンっているのかな。