宇宙に出会う。
あれは平日の昼間、黄色い不思議な賃貸アパートらしき建物の上にクルクル回る物体が浮かんでいるのに出会った。
ピカピカピカピカ光りながらクルクルクルクル軽やかに回転していた。
16分音符の5連符のようなリズムだったから正確にはクルルルルクルルルル。
しばらくぼうっと眺めていた。
いつまでも楽しげに回転していた。
宇宙人が府中に遊びきていたんだね。
ろくにお構いもできませんでどうもその節は失礼いたしました。
うちゅう、と、ふちゅう、音が似てるからね。ウィーンを姉妹都市にしてる場合じゃないぞ、府中市!
伊勢で宇宙に出会う。
斎王(天皇の代わりに伊勢神宮に年3回参拝するために都から伊勢へと派遣される皇女。亀の甲羅の占いでどの皇女が斎王になるかが決まるらしい。南北朝時代に制度が終わる)が都から伊勢までやって来る時の様子や斎宮での生活などを物語る映像を博物館で観た。
その映像の中に貴族同士が話をする場面が出てきた。その話し方が実に宇宙人を彷彿させた。敢えて言うなら、横山ホットブラザースの「おーまーえーはーアーホーかー」のイントネーションにやや近い。
コープで宇宙に出会う。
具体的には鮮魚コーナー。
三角のアタマやイカにもアタマの良さそうなあの眼を見るたび、宇宙人を彷彿とさせじっくり見てしまう。それ故、干物コーナーや珍味コーナーですっかりスルメイカやらさきイカに遭遇した際には只管に心の中で祈るしかない。
イカは人の顔を覚える、とどこかで聞いたことがある。いや、それはタコだったか。多分お二方とも覚えるのだろう。だって宇宙人だもの。
たくさんある足や吸盤は知性の表れなのだろう。
「このイカ野郎!」はもはや褒め言葉である。「このタコ!」然り。
…そんなわけで、イカを食べるときはとても緊張してしまうのであまり食べないで密かに尊敬している。イカサマ、ではなく、イカ様。
おうちで宇宙に出会う。
セキセイインコだ。
宇宙人の置き土産、とも一部ではささやかれているようだ。
うちにセキセイインコがいる。
その名もピコちゃん。
正確にはこれは俗称。
正式名称はピコリーノ及びピコ太郎。
セキセイインコの顔からしてどことなく貴族的である。お鼻とお嘴がくっついていてその総体がやや縦長のハートマークのように見える。そして嘴の下方の両側にお髭のようなものがある。これもまた貴族的である。
また体本体と同じくらいに長い尻尾。
例えるなら本州と九州とが同じ長さ、という感じだろうか。
セキセイインコの囀りがどうにも宇宙と交信しているように聞こえる。
ぐるぐるピーピッコロチャーンぐるぐるんー?ロロロロロ(トリルも混ざっている)ピコピコピコピコ…
耳を澄まして聞いていると暗い宇宙にキューっと吸い込まれて行くようなグルーブ感がやってくる。
遠いようで意外と近い宇宙。
遠くの親戚より近くの質屋、とかいう看板が吉祥寺にあったっけ。