Amazonからパソコンにメールが来ていた。
「お客様のご要望の通りアカウントのアドレスを◯◯◯◯◯に変更いたしました」
ご要望した覚えはない。
メールを見たのは夜の10時過ぎ。
アカウントの乗っ取り、というやつか。
焦った。
カード決済は一切していないけど焦った。
メールでの問い合わせもまだるっこしかったので、スマホでAmazonのカスタマーセンターの電話番号を調べてに電話した。
すぐに担当にお繋ぎされた。
すごいなぁ、こんな夜分にこんなにすぐに繋がるんだね、Amazonは。てっきり「営業時間内にお掛け直しください」というような電子音声か流れるだけかと思った。
ネット関係には頗る弱いわたしの要領を得ない話の要領をお姉さんは穏やかに的確に把握する。
アカウントサービスに入れるかどうかをお姉さんは聞いたが、焦燥感と恐怖感しかなかったわたしはろくに試しもせずに「入れません」と言ってしまった。
するとお姉さんはわたしを安心させるためにいろいろ考えてくれたが、アカウントの凍結はできないということだった。
事態を専門部署に連絡して調査した結果をパソコンのメアドまで送ってくれるということで一旦は終結した。
電話を切った後、Amazonのサイトを開いてみると、「ようこそ◯◯◯◯さん」とわたしの名前が出てきた。サインインの画面まで行けた。そこにあったメアドは、Amazonからのメールにあったメアドとはまた違っていた。短時間で更に第三者が変更したのだ。
パソコンの画面をそのままにして再度カスタマーセンターに電話をした。とにかくアカウントを凍結してもらいたかった。
今回もすぐに先ほどとはまた別のお姉さんが出て来た。
前のお姉さんとのやりとりを手短かに話し、サインインの画面に行けたことを伝えた。するとお姉さんは名前やら住所やらいろいろと穏やかに聞いてきたのでなるべく丁寧に答えた。「購入履歴の最後が『ムーミン谷の冬』のキャンセルですね」と問われ、ああそうだったな、近所の書店で注文したら「注文できない」って言われてAmazonで注文確定した翌日に他の本屋に置いてあったのを買ったのだった。ちょっと気まずかったが、その前にはAmazonで「手乗りちゅっちゅ」(首を傾げながら囀りしたりいろいろ歌を歌ってくれたりしてかわいいおもちゃ。うちのインコさんたちにも概ね好評。)色違いで二つ買ってるし(後から買ったほうが先に買った方と比べて些か元気がない。おとなしいたちなのだろう。2人で合唱するときもある)まあいいかと思い直した。
無事アカウントの凍結処理をしてもらった。
お姉さんたち、仕事とはいえ夜分にすごいな。朝寝昼寝していたとしてもすごいよな。
早朝に電話してもあんなに穏やかなお姉さんがすぐに出てくるのだろうか。試してみたいけれど早朝に起きるのは気がすすまない。無理やり起きた朝は心臓がバクバクして寿命が縮む気がする。それにお姉さんたちに無駄な仕事を増やしちゃいけない。
Amazonのセキュリティが軟弱なんじゃないか、とか、Amazonで買うとお金は日本を素通りしてしまうんだろ、とか、アマゾン川は雰囲気的にアフリカかと思ったら南米なんじゃないかとかお姉さんに対してAmazonについての文句はいくらでも言えるだろうが、それよりもこんな時間に顔の見えない相手に気を使いながら穏やかに対応するうら若きお姉さんたちの働きを思うとそんな気も失せて、夜分にありがとうございますなどとつい労いの言葉をかけて電話を切った。