初台のオペラシティでエマールのピアノを聴く。
ある調律師のドキュメント映画『ピアノマニア』に出ていたピアニストだ。
席は2列目の真ん中辺り。
曲目だけあって、聴衆も落ち着いていて安心して聴き入ることができた。
演奏会によっては落ち着かない場合もある。
マーラーだけにオーケストラの規模も大きく、ダイナミックに鳴らしてくるので聴いている方もアドレナリンが放出される。
最終楽章が終わるや否や、私の席の近くのオヤジが「ブラボー」と叫んだ。早いよ、と瞬時に思った。それとほぼ同時にそのオヤジの近くの席のオヤジが「早えんだよーーーー!」とブラボーオヤジに怒鳴りあわや一触即発の場面となった。
因みに団体さんに向けてブラボーを言いたいときは「ブラーヴィ(bravi)」、女性のソリストに向けて言いたいときは「ブラーヴァ(brava)」、「ブラーヴォ(bravo)」は男性のソリスト向け…だそうである。
さて、エマールの演奏。
譜面台には使い込んだ楽譜。
曲の中に埋没し、曲と一体となり、魂を震わせ祈るように一音一音を奏でていく。まるで楽譜が彼の魂に指令しているかのようだ。全身全霊の響きに聴き手の魂も揺さぶられる。
エマールの祈る魂にひたすら耳を傾けた。
神々しい美に触れた。
美しいものに触れると魂が喜ぶのが分かる。
ああ、ずっとこのままでいたい。