へっぽこるみ日記。

毎日毎日日が暮れる。半期に一度の即興ピアニストのつれづれ。

深淵をのぞく。

初台のNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)へ坂本龍一の『設置音楽展2 IS YOUR TIME』を観に行く。

 

真っ黒い空間に足を踏み入れる。

左右の壁に沿って四角いディスプレイが等間隔で並んでいる。

水中の泡のようなものを映し出し明度が上がって白くなりそして明度が下がり真っ暗になったりをくりかえす。

スピーカーも随所にある。

坂本龍一『async』の音源が流れる。

部屋の奥の真ん中に小さなヤマハのグランド。

砂にまみれて、弦も錆びて高音域は切れているところもある。

東日本大震災津波で被災したピアノ。

そのピアノに自動演奏装置が取り付けられている。

ポツポツと自然のタイミングで単音が奏でられる。

津波という自然によって調律された楽器から出る自然の音。

その空間にしばし浸る。

自身の中の深いところが静かに落ち着いて喜んでいる。

ああいつまでもこうしていたい。

時を、我を忘れて佇む。

佇む、ピアノを遠目に眺める、佇む、ピアノに近づいて見つめる、佇む、遠目に、近づいて…

を繰り返す。

生と死の淵に触れたような淡い錯覚。あわい。

ピアノの記憶を追体験するような不思議な感覚。想像的錯覚。

名残惜しくも充分堪能して空間を後にする。

自分の中の無意識な漠然と形にならないヴィジョンを坂本龍一は具現化してくれる時がある。

ありがたい。

 

同時開催の『OPEN SPACE 2017』をちらっと覗く。

evalaの「See by your ears」。

無響室で音源を聴く。

スタッフの方に案内されて中へ入る。

壁はうねうねしている。

部屋の中央に椅子がある。

そこに座り暗くした中で頭の後ろから流れる音源を聴く、というもの。

本当は音を見るのだろう。

 

無響室にいる自分がいつになくほっとして安らいでいるのを感じる。

肌から入る刺激も遮断されるのだろうか。

ああ、癒される。安らかだ。

音源がいらないくらいだ。

これで重力からも解放されたら本当に安穏だろう。

 

IS YOUR TIME、来年の3月11日まで。

またあのピアノに会いに行こう。