川上弘美の『七夜物語』を読み始める。
主人公の女の子には「中野のおばあちゃん」がいるらしい。
わたしにも「中野のおばあちゃん」がいた。東京都中野区に住んでいるおばあちゃん、だ。
よく中野のおばあちゃんちに行っていた。おじいちゃんもいるのに「おばあちゃんち」。
小学校低学年のころ「おはなしノート」というのがあった。
ジャポニカ学習帳などの表紙に担任の先生が作った「おはなしノート」と印刷されたピンクの色画用紙を貼って作るのである。
日記を書いて先生に提出する、というもの。日記といっても毎日出す必要はなく、出したいときに書いて出し、「それはよかったね」「先生も小さい頃にやったことがあります」などと赤ペンで担任が感想を書いて返して来る。
「おはなしノート」に中野のおばあちゃんのところに行ったことを書いて出したことがあった。
「中野のおばあちゃんの家に遊びに行きました」
というわたしの記述に対してその担任は、「中野」の文字の上に赤で二重線を引いてその傍に「いなか」と添削して返してきたのである。
なんとなく腑に落ちなかったが、音楽の時間にメロディがどんな調であっても左手の伴奏を常にハ長調の「ドミソ」にしてしまうような担任とは関わってもあまりいいことがなさそうに思えたのでそのままにしておいた。