自宅から駅までの道はほぼ真っ直ぐだ。
10分弱の行程で、途中3箇所くらいに「耳鳴り増幅スポット」がある。
もともと左耳の低音部が原因不明の難聴なので、それに伴う耳鳴りはしている。「聞けていない高さの音を補おうとすると耳鳴りが発生する」とどこかで聞いたことがあるがどんなものだろう。
「出産の時に失聴する可能性があります」とは言われている。それは困る。さらに別件で、脳幹の近くに血管腫がある関係で「出産の時に出血する可能性があります」とも言われたことがある。あかちゃんを置き去りにしてこの世を去ってしまうのも申し訳ない。こりゃ産まないほうがよさそうだ。ま、産むまえに番いにならなくてはいけないらしいがその段階にももう至りそうにないので、今となっては心配は無用。
さて、耳鳴り。
音が歪んで聞こえるようになったのがそもそもの始まり。次第に耳鳴りがトッピングされた。機関車の「ゴッゴッゴッゴッ」みたいな低音だった。当初はもう朝から寝入り端まで気になっておかしくなりそうだったが気づくと慣れていた。その音がやがて「ピー」という高音の耳鳴りと入れ替わった。リズムがない分若干馴染みやすかった。もうかれこれ30年来の付き合いになるだろうか。いろんな病院でいろんな検査をしたが原因は分からず病名も特定できず、不治であることだけがわかっている。
普段は気にならないが、耳鳴りの話をしたり音楽を聴いたあとや人と長く話したあとや目から光が入った時などに耳鳴りが増幅する。また、耳鳴り音「ピー」と高さや音質が近い音を聴くと途端に増幅される。
馴染みのピアノの調律さんは還暦を結構過ぎているようだが「モスキート音が聞こえるんだよ」と言っていた。電波の音などいろいろと聞こえてしまうらしい。それはそれで大変そうだ。ピアノの倍音もかなり聴こえているそうだ。
そんな話に触発されて、今日は改めて意識をしながら駅までの道のりを歩いてみた。
一番目のスポットに差し掛かると例の音が聴こえてきた。公園のようなところだ。そこを通り過ぎると収まった。そして二番目のスポットに行くとまた例の音がした。駐車場のあるところ。そこを過ぎると止んだ。そして三番目のスポットでまた例の音がして、通り過ぎると鳴り止んだ。歯医者さんのあるあたり。
駅までの道の向こうには電車が走っている。
そう、不思議なことにこの「例の音」はどういうわけか聴力のいい右耳ではキャッチできないのだ。
耳鳴りが呼び水になっているのだろうか。
左耳は医学的には「難聴」だが、もしかしたら可聴音域が左右でちがうだけなのかもしれない。
するとこの左耳に聴こえているものは一体どこから来ているものなのだろうか。
ただの見えない電波の音なのだろうか。
または宇宙人からのメッセージかもしれない。今はまだ聴こえている音にのせられた意味が読み取れないけれど、いつか理解できるようになるのかもしれない。
がんばろ〜っと♪