『ビューティフルサンデー』が祭り太鼓を伴って盆踊りに使われていたのを初めて耳にした時は衝撃的だった。
昨日、近所の商業施設の前にチンドン屋が出ていた。ドリカムの『晴れたらいいね』をやっていた。
『晴れたらいいね』は裏拍にアクセント置く。スウィングのように「ツッターツッター」の「ター」のところににアクセントを置く。
これがチンドン屋の手にかかると表拍にアクセントが来る。
脱力系グルーヴ。
これはすごい。
あのグルーヴを緊迫した場面に導入したら衝突も戦闘も緩衝されるんじゃないかな。
「ま、いっかぁ、アハハハ」で収まるのではないか。
トルコの軍楽隊『メヘテルハーネ』はあまりのうまさと魅惑的な音楽で敵の戦意を挫いた、と言われている。それに匹敵するインパクトがあるのではないだろうか、チンドン屋には。強力な戦意喪失平和的兵器となりうる。音のゆるキャラだ。
紛争地にチンドン屋。
陸海空軍の儀式にもチンドン屋。
政府もチンドンを奨励。
芸大にチンドンの演奏家を養成するチンドン専攻科を新設。全国の国公私立音大にもチンドン科が増設。
全国の小中高等学校の吹奏楽部はチンドン部へ。
全国青少年チンドンコンクールでの優勝を目指してどの学校も日夜練習に励んでいる。チンドンの強い学校は人気だ。
街の音楽教室にまで波及。「3歳からのチンドンレッスン」が超人気。生徒の母親のひとりはこう言う。「チンドンを習わせたいなら早い方がいい、っていうのはママ友の中でも常識。うちの子も英語を習わせていたのですが、もう英語なんて古いな、と思って。やっぱこれからはチンドンの時代かなって」
世界も注目。チンドン留学に世界中から若者が日本に押し寄せる。「AIの研究をしていましたが行き詰まりを感じたところにたまたまチンドンをyoutubeで見て『これだ!』と思い日本に来ました」と留学生のひとりはこう語る。
…とならないとも限らない。
大いなる可能性を持ったチンドン屋である。