rumipianoのへっぽこるみ日記。

即興ピアニストrumipiano(岡本留美)のブログです。日々のつれづれ、脳内日記(創作日記)、演奏会情報などを載せています。YouTube公開中(『youtube rumipiano』で検索)。ホームページは「rumipiano ホームページ」で検索するとご覧いただけます。お問い合わせはrumipianosokkyo@gmail.comまで。

さすがは百閒。

今朝の東京新聞の『筆洗』に「芥川龍之介は一年のうちで11月、12月が最も好きだったそうだ」というようなことが書いてあった。

 

芥川が自死した二日ぐらい前に芥川に会いに行っていたのが内田百閒だった。

芥川と百閒は漱石の門下の間柄で、芥川は百閒にはどういうわけか親しみを抱いていたらしい。

「君(百閒)の事は僕が一番よく知っている。僕には解るのだ」(内田百閒『亀鳴くや』)

 

百閒はこの時芥川のところでお金に困った相談をしたらしい。芥川は当時で百円ほどをその場で間に合わせてくれたという。

その日の芥川は麻薬のせいか朦朧としてフラフラだったらしい。

 

芥川の自殺の要因を百閒が思いを巡らせているくだりがある。

「芥川君が自殺した夏は大変な暑さで、それが何日も続き、息が出来ない様であった。余りに暑いので死んでしまったのだと考え、又それでいいのだと思った。原因や理由がいろいろあっても、それはそれで、矢っ張り非常な暑さであったから、芥川は死んでしまった。」(『亀鳴くや』)

 

いくらなんでも暑かったから死んじゃったはないだろう、と思っていた。

しかし、芥川が寒い季節が好きだったならありえるかもしれない。

百閒先生、さすがである。

 

さすがついでにもうひとつ。

百閒のお琴師匠、宮城道雄が列車から落ちてその怪我が元で亡くなった。東海道刈谷駅付近でのことだったらしい。

百閒がその場所を見に行くことがあった。

「一緒に来てくれた駅長とその地点へ行こうと思う。線路際へ降りる前の、石垣の崖の上に農家が一軒ある。そこで飼っている雞(にわとり)の糞を蓆(むしろ)にひろげて日なたで乾かしてある…(中略)…雞の糞がむらした様なにおいを発して辺りが臭い。

宮城が落ちた所はすぐこの下である。そこへ自分の足で行って見ようと思う…(中略)…雞の糞が乾きかけている。乾きかけだから臭い。

駆け降りる様にして線路際へ降りた…(中略)煉瓦の橋脚に一ヶ所、石垣に二ヶ所、宮城の頭髪と血痕がついていたと云う。その隅になった所にたたずみ、一寸その場所は寝て見ようかと云う気がする。しかし石垣の上の雞の糞は臭かった。あれはまだよく乾いていないから臭い。」(内田百閒『東海道刈谷駅』)

 

お坊さんを連れ立って供養はしたが暑くて臭いから結局早々に引き上げたのだった。

 

どんなシリアスな状況も暑さと臭さには敵わない百閒先生なのであった。