朝の通勤電車でこぐまに会った。
車両のドアにはりついていた。
ケーキ屋の店長らしい。
そう、『こぐまのケーキ屋さん』の宣伝である。
「もういくつ」という作品がそこには載っていた。
まったくなんなんだこの狙ったようなキュートなほんわかストーリーは!!
そんな策略には騙されないぞ!
何がおしょうがつたのしかったですね、だ。
何がおもちおいしかったですね、だ。
何があといくつねたらまたおしょうがつが来ますか、だ。
何がかわいそうだから少なめに言ってあげた、だ。
…とかなんとか思いながら何度も何度も読んでいるうちにほんわかじんわりしてきた。
結局その日のうちに『こぐまのケーキ屋さん』を購入してしまった。
おまけに後日、二巻と三巻も買ってしまった。
ほんわかしててなかなか面白い。
けれどもじっくり読んでいるうちに気がかりなことにぶつかった。
このこぐま、よくよく見るとなんだかホラー漫画に出てきそうな顔なのである。
笑っていてもどことなく表情が切羽詰まった感じなのである。
陰影が多いのかそれとも民芸品の木彫りの熊かモデルなのか…
健気でほんわかなのにホラー。
まあこのギャップが人気の秘訣なのかもしれない。
おそるべし、『こぐまのケーキ屋さん』。