かいだんけむりを作っているのはもう今や日本でひとりだけらしい…ということをテレビでやっていた。
駄菓子屋で一番好きなのがかいだんけむり。
おばけの絵が描いてある紙になにかベタベタしたものが付いていて、それを中指の先につけてから、親指と中指の腹を合わせたり離したりすると、あ〜ら不思議!もわもわと煙が立つのですよ。
かいだんけむりの紙には「かいだんけむりを夜中の2時に階段でやるとおばけがでる」らしいことが書いてあった。
これは何としてもやってみなくては…
ある日、実行に移すことにした。
当時小学二年生だった私は、夜中の2時までなんとか眠らずに必死に頑張った。
さて、2時が来た!
私の家はマンションなので残念ながら家の中には階段がない。
玄関ドアの鍵を音を立てないように細心の注意を払って開け、非常階段までかいだんけむりを持っていそいそと向かった。
非常階段のドアを開けると真夜中でも灯りが煌煌とついていた。
まあ当たり前だ。
非常階段だもの。
階段に腰をかけておもむろにかいだんけむりのベタベタを指につける。
それからかいだんけむりのベタベタが付いた親指と中指の腹をパチパチ合わせる。
煙がフワフワ出た。
フワフワフワフワフワフワ。
しばらく試してみた。
が、おばけらしいものは出なかった。
内心ホッとした。
おばけには非常階段がちょっと明るすぎたのだろう。