かかりつけの胃腸科に行く。
気休めに飲んでいる逆流性食道炎の薬が残り少なくなってきたからだ。
院長診察の曜日だとどえらい混みようなので、余程のことがない限りその曜日には行かない。
院長曜日ではないと受付してから5秒で呼ばれたこともある。
しかし今日は院長ではないのに珍しく待ち時間が長い。
天変地異の前触れだろうか。
待合室にはいつも葉加瀬太郎やそれに付随したような音楽が流れている。そして『日経大人のOFF』とか『オレンジページ』『読売新聞』などが置いてある。アクアクララのお水がある。レバーを下げるとタンクがコポコポいうのが好きでその音聴きたさに水をいただくこともある。客層というか患者層はすっきりした身なりの老若男女が多い。
以前行ったクリニックの待合室に『ビッグイシュー』が置いてあったことがあった。あれはクールだったなぁ…
母もやはり逆流性食道炎で胃腸科にかかっているのだが、母の行きつけの病院は院長が「インテリな具志堅用高」という感じでなかなか味がある。待合室には、有線なのだろうか、クラシックの中でもちょっとマニアックな香りのするもの(まあわたしが知らないだけなのだろう)が流れていて思わず聴き入ってしまう。漫画と電話帳と三越の外商カタログみたいなものが置いてある。電話帳をしみじみと眺めるのも悪くない。患者層も悲喜こもごもな老若男女という感じで実にシブい。
時々お世話になる内科がある。
靴は下駄箱に入れてスリッパに履き替える。
待合室は比較的ゆったりしていて天井が高い。
診察券もツルツルしていない。
昭和テイストな応接間セット(ソファとテーブル)や観葉植物、そして普通の待合室にあるような椅子もある。いつもスタンダードなクラシックが流れている。
そう、病院の待合室には何と言っても家庭画報だ。
子供ながらにめくってながめていたのを思い出す。もちろん自宅でではなく病院の待合室で、だ。
とにかく家庭画報は重い。未だに重い。
ベッドに仰向けになって眺めるにはライザップでムッキムキになってからではないと無理だ。
奥さまがたはあんなに重い家庭画報をどのように眺めていらっしゃるのだろうか。
侍従に下から家庭画報を支えさせ、もうひとりの侍従にページをめくらせているのだろうか。
頭を打ったら間違いなく流血騒ぎになりそうな大理石のテーブルの上で侍従にページをめくらせながらご覧遊ばすのだろうか。
わたしのかかりつけの胃腸科には家庭画報はない。