優生保護法というのが話題になった。
この法律により障がいや特定の病気がある故に生殖することを強引に禁じられた人々がいた。
ひどい法律があったものだと思った。
しかしこれは決して他人事ではなかった。
自分の中にも優生保護法的な考えがあったのだ。
障がいのある弟を持っていながら…
弟は生まれつきの重度の自閉症(近年では「自閉症スペクトラム」というのだろうか)だ。今は千葉の施設でお世話になっている。
小さい頃から弟を育てる母親を見てきた。
障がいのある人を育てるのは本当に本当に大変なことだ。
母はほぼひとりでその苦労を請け負っていた。わたしにはその苦労を分担させたくないとの思いからあまり手出しをさせなかった。
父は仕事が忙しくまた病身でもあったので、弟のことを気にしながらも構う余裕はなかった。
弟の世話と父の食事療法とその他の家事などが全て母の担当だった。
障がいのある人を育てるのは自分にはとても無理だから出産はやめておこう、と思ったのはいつのころからだっただろうか。中学くらいの時にはすでに決めていたのは覚えている。
しかしこの考え方の中に優生保護法的なものがあるのだと気づいたのはつい最近だ。
成人してからも情緒も生理もなかなか安定せず、左耳低音難聴や後年見つかった脳の静脈性血管腫などが諸々に重なってこういう流れに至ったのかもしれない。
しかしこのような事情は別にしてもやはり障がいのある人を出産するリスクを避けたことにはかわりない。
障がいのあるきょうだいがいながら結婚や出産をしたひとたちもたくさんいる。優しくて勇気があるなぁと思う。
この代償は何かしらの形でこの先も抱えていくのだろうと思う。