ボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルトが亡くなった。
随分前に有楽町の国際フォーラムの大きなホールで聴いたことがある。
夜の7時の開演予定。
7時を過ぎた頃、会場アナウンスが入った。
「ジョアン・ジルベルト本人は只今ホテルを出たとの情報が入りました」
会場からどっと笑いが起きた。
さすが神様。
さすが巨匠。
しばらく待っているとまたアナウンスがあり、
「ジルベルト本人の希望から上演中は会場内の空調をオフにさせていただきますのでご協力お願いいたします」
決して涼しい季節ではなかった覚えがある。
初夏か晩夏か…
空調が切られ、ジルベルトがふわっとステージに現れた。
それから二時間近く、休憩もなくジルベルトはひたすらギターを爪引き唄を聴かせてくれた。
風のような自然な唄とギターの音。
上澄みよりも澄んで、軽やかな音楽。
自然の揺らぎのような音だった。
もわもわした空気の中で神様の音に包まれいい具合に魂が解放されたのを今でも覚えている。
ジョアン・ジルベルトを最初に知ったのはスタン・ゲッツとの『イパネマの娘』が入ってるあのアルバムだった。
そしてジョアン・ジルベルトのアルバム『Brazil』を聴いて心を奪われた。
全てが美しく心地よかった。
今でも宝物のアルバムだ。
ご冥福をお祈りします、心より…