今年もまた岡田博美の演奏会に行く。
岡田博美というピアニストを知ったのは随分前のこと。
サントリーホールにラフマニノフのピアノコンチェルト第2番を聴きに行った。とにかくラフマニノフの2番をナマで聴いてみたかったのだ。
その時のピアニストが岡田博美だった。
淡々とした表情で熱く激しく程よい甘美さもあり抑制も効いたファンタスティックな演奏だった。その上テクニックも抜群の安定感。
この人のピアノをもっともっと聴きたい…と思った。
それからほぼ毎年ソロコンサートに行くようになった。
このソロコンサートがまたすごいのだ。
悪魔的に、そして変態的にうまい。超人的なテクニックと全宇宙的な表現が合体した感じ、とでも言ったらよいか。
今回もすごかった。
ベートーヴェンの「ピアノソナタ変ホ長調」に始まり、ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」そして休憩を挟みドビュッシー「子供の領分」、サン=サーンス「グルックの〈アルセルト〉の舞踏曲にもとづくカプリス」「ワルツ形式によるエチュード no.6」。
どの曲もまるで自身で作曲したかのように弾く。
ポーカーフェイスでステージに現れ、一旦ピアノの前に座ると一気に世界へ入っていく。こちらも一気に連れて行かれる。
ああ、もう何が何だか…魔術的、幻術的、妖術的でさえある。
魂消てしまう。
アンコールはショパン「エチュード(牧童)」とサン=サーンス「左手のための6つのエチュード」からの一曲だった。
また来年も楽しみだ。