ナチュラルチーズが健康にいい、と聞いたのでナチュラルチーズを食べるようになった。
チーズ商品のパッケージには「ナチュラルチーズ」とか「プロセスチーズ」とか書いてある。
プロセスチーズはいろんなチーズが混ざっていて、ナチュラルチーズはそうでもないらしい。
わたしはもっぱら牛印乳業の「モーモーチーズ」というナチュラルチーズを毎日の朝食のサラダに添えていた。
モーモーチーズを食べるようになってから塞ぎの虫が起きなくなった。
ウキウキとご機嫌がいいのであった。
すごいなぁ、ナチュラルチーズ。
メンタルにも効用があるのだった。
今日はみうこちゃんに会った。
みうこちゃんとは幼馴染み。
大人になった今も時々お茶を飲んだりしている。
みうこちゃんは占い事務所で秘書の仕事をしている。
「あら、なんか元気そうだね。明るいオーラが出てるね」
と、わたしを見るなりみうこちゃんは言った。
「うん、そうなんだよね。なんかね、ナチュラルチーズを食べるようになってから気分が良い日が続くようになった気がするのよね」
「へぇ、そうなの。ナチュラルチーズねぇ…」
「うん、チーズにはプロセスチーズとナチュラルチーズがあって、ナチュラルチーズの方が健康にいいんだって」
「へぇ、なるほどね。あ、そういえば、ナチュラルハイチーズってのもあるんだよね」
「そうなんだぁ」
「うん。食べるとナチュラルハイになるんだって」
「ふーん。そのまんまだね」
「そだね。ナチュラルチーズにナチュラルハイになる成分が入ってるんだって」
「そなの?」
「うん。別に違法薬物とかじゃないらしいんだけどさ。企業秘密なんだって。でもなんとなく怪しいよね。」
「何て言うチーズ?」
「うーん、何だったかなぁ…マ?ミ?ム?メ?モ??」
「モーモーチーズ?」
「そうそうそうそう!それそれそれそれ!モーモーチーズ」
「ふーん」
「あーたもしかして…」
(みうこちゃんは「あなた」のことを「あーた」と言う)
「うん、毎朝食べてるよ、モーモーチーズ」
「ほんとに効果あるんだね」
「すごいね、モーモーチーズ」
「わたしも食べてみようかな、モーモーチーズ」
「うん、いいかもよ」
「帰りに買って帰るわ」
みうこちゃんと喫茶店を出た。
喫茶店から少し駅の方に行きつけのスーパーがあるので覗いてみた。
モーモーチーズがいつもの場所に見当たらなかったので店員さんに聞いてみた。
「モーモーチーズありますか?」
「あ、あれですか…製造中止になっちゃったんですよ。売れ行きよかったんですけどね」
「え…そうなんですか?困っちゃうなぁ…」
「そう、みなさんそうおっしゃってて…ご迷惑おかけします」
「いえいえ」
他のチーズを見てみたら、どれもプロセスチーズかナチュラルチーズだった。
「うちにまだモーモーチーズのストックがあるよ」
「わ、食べてみたーい」
みうこちゃんはうちに来た。
早速冷蔵庫からモーモーチーズを取り出してみうこちゃんに見せた。
みうこちゃんがモーモーチーズのパッケージをまじまじと観察した。
「あ、ほら!ナチュラルハイチーズって書いてあるよ」
「わ、ほんとだ!全然気づかなかったよ。てっきりナチュラルチーズって書いてあるもんだと思い込んでた」
みうこちゃんとわたしとでモーモーチーズを食べた。
「味は普通だね」
「うん、そうなの」
しばらくすると二人してナチュラルハイになってきた。
ステレオで『ハイサイおじさん』をエンドレスで流しながらみうこちゃんとひょろひょろ踊り続けた。
気づいたら窓の外は夜の帳が下りていた。
みうこちゃんはナチュラルハイなまま気持ちよさそうに帰って行った。
なんだかほっこりしたいい一日だった。
残りのモーモーチーズは大切に食べようと思った。