駅の近くにスナックがある。
だいたい昼間に店の前を通るので、シャッターが閉まっている姿しか見たことがない。
そのシャッターにいつからか手書きの求人広告が貼られている。
45歳まで。
やる気のある方。
といった趣旨のことが記載されている。
50歳まででもいいんじゃないの…と思ったりして広告を横目に通り過ぎた。
それからひと月ほど経ったある日、またそのスナックの前を通るとまだ広告が貼ってあった。
「45」が「50」に上から張り替えられていた。
それからまたひと月ほど経ったある日、その店の前を通った。
「45」に戻っていた。
ママ「いやーなかなか人が来ないのよぉ…50歳にしてみたんだけどね」
客1 「俺はやっぱ若い方がいいよなぁ」
客2 「僕もどっちかといえばそうだなぁ…もちろんママは別だよ、イヒヒヒヒ」
ママ「もーう、何言ってるのよ、てっちゃん(客2の通称)ったら」
客1 「お前は熟女好きだからなぁ」
客2 「お前なんかロリコンじゃねぇか」
客1 「なに、このやろう」
客2 「やんのか、てめえ」
ママ 「こらこら、二人とも。うん。
とりあえずまた45にに戻しておこう
かしらね」
…などというスナックのママと常連客たちとのやりとりでもあったのだろうか。
手書きの広告の中の「歳」という字が盆栽の「栽」のような誤字になっていることが応募の来ない一因ではないだろうか、と個人的には案じている。