何年か前のあの夜。
どうにも寝付けなかった。
祖母が入院していたのだが、あまり状態がよくなかった。
なかなか眠れなかった。
そうこうしているうちに全身が脈打ってきた。
頭から足先まで。
何が起きているのか
どこかが破裂してしまうのだろうか。
とりあえず過ぎるのを待った。
携帯が鳴った。
祖母のいる病院からだった。
危篤だということだった。
未明だったのでタクシーを呼んで中野の病院に母と向かった。
雨に濡れた歩道がキラキラしていた。
しばらくは信号に引っかからずに滑らかに進んでいた。
井草八幡宮のある交差点で赤になった。
携帯を見た。
4時44分。
八幡宮に祖母をよろしくと挨拶した。
後日、いとこに全身が脈打って眠れなかった話をしたら「わたしも全く同じだった」と言っていた。
祖母が挨拶に来てくれたのかもしれない。
暗い病室でひとりで旅立っていった。
申し訳なかった。