江戸時代の死生観など諸々の話を聞く機会があった。
講義の冒頭で講師の方が「死後の世界があると思ってらっしゃる方いますか?」と質問をした。
会場には60人以上はいたように思う。
ほとんどの人が手をあげると思い、元気よく手をあげた。
ところが、挙手したひとはまばらだった。
講師の人も「あ、いらっしゃるんですね、まだ」みたいな感じだった。
これには心底驚いた。
70代の母が「死んだら終わりよ。その後の世界なんない」と断言するのだがそんな風に思うのは稀な人だと思っていた。
自分の方が稀だったとは…
死後の世界があるからそんなに現世でしゃかりきにならなくてもいいやとほぼ半世紀近くになる人生でずっと思って暮らしていた。
そう、死んだら元々いた世界に戻るか輪廻転生するものだと。
だから「死後の世界」と言われて「元々いた世界」「輪廻転生後の世界」をイメージしていたのだ。
見学だか修行だか何らかの必要があって現世に送られたのだと思っていた。
みんなもそう思っているのかと思っていた。
そっか…
一度死んだら先は無いのかぁ…
だからがんばってるのかぁ…
確かに父親が死んだ時、「ひとはいつか死んじゃうんだ」と実感して「やりたいと思うことはやっておこう」と思ったのは確かだ。
でも死んだ先がないことなど全く念頭になかった。
だけど果たして本当だろうか。
輪廻転生はよくわからないが、元々いた世界は
あると思う。
そこでの記憶がなんとなくあるからここ(現世)に違和感を感じるのかもしれない。
ここにもう50年近くいるのに未だに馴染めないでいる。
時々ふと「ああ早く帰りたいなぁ」と漠然と感じることがあるのもそのせいなのかと思っているのだがどんなものだろう。
ああ、なんだかぼんやりしてきた。