このところずっと悩んでいた。
ピアノの真ん中の「ド」の左隣の「シ」を弾くと部屋の中の何かがビャンと響くのである。
しかもその「シ」のオクターブ下の「シ」を弾いてもビャンという音がするのだ。
何かが共鳴している。
一体何が?!
押し入れの扉は防音工事の時に二重のガラス戸になった。ビャン、と音のする方向にある。
ガラス戸を開けたり閉めたりしてチェックする。
どうやらそのひとたちが原因ではないようだ。
押し入れの中のものが共鳴しているわけでもなさそうである。
じゃあ誰だ?!
壁にかかっているカッサンドルのポスター(複製)や、いとこが描いてくれた「るも」ちゃん(「最近もわもわしてまるめ水底の藻のようなブルーな気分なの」と言った時に描いてくれたもの。「るみ(rumipiano)」と「藻」を合わせて「るも」)、お腹を押すと「プイ」と鳴るインコのぬいぐるみ、天井から吊してあるUFOの風鈴や木のネズミがバネにくっついてびょんびょん動く飾りもの…など狭い巣のような部屋にはいろんなものがいるが、どれも共鳴元ではなさそうだ。
板張りの床か?壁か?天井か?それともベッドの金具かエアコンか、換気空気清浄機か…
ピアノに集中出来なくなる。
こんなことで集中を欠いてはダメだダメだ!…と自戒する。
しかし聴こえているものを聴こえないことには出来ない。それが成功すると危険なのは遥か昔に経験済みだ(そのおかげで左耳の低音部難聴がある)。
悶々とした日々が続いた。
ピアノを弾く友人に相談してみると、
「あ、それ、ピアノあるあるだよね」
そうか、あるある、なんだ。
「わたしもあったよ。結局ブリキの間の中のえんぴつが響いていたんだけどね」
なるほどぉ…やはりその手のものかぁ…しかしこの部屋には見当たらない。
そして昨日…
ピアノの基礎練習を始めるや否や「ビャン」がやって来た。
けれどもいつもより「ビャン」の音が耳に近づいてきたような気がした。
注意深く音の方向を探る。
どうやら上方から来ているようだ。
上方…天井についている照明器具、シーリングライトが目に入った。
ベッドの上に乗りシーリングライトのカバーを触ってみると中途半端な嵌り方をしているのが分かった。
慎重にカバーを調整した。
しっかり嵌めた。
そしてベッドから降りてピアノの「シ」を弾いてみた。
共鳴はしなかった!
「あ〜そうかそうかきみだったのか…そうかそうかきみだったのか…」
知らず知らずのうちにシーリングライトに話しかけていた。