panpanyaの漫画『模型の町』に収録されている「移動」という話を読んだ。
学校の校舎が耐震工事で使えなくなるからこれから移動するように…と先生に言われ生徒たちが自分の机と椅子と荷物を持って離れた場所にある仮の校舎まで町中を通り移動する、というストーリー(最後の展開も地味に面白い)だ。
それを読んでいてふと思い出した。
ある中学校に勤めていた時のこと。
生徒に三年間同じ机と椅子を使わせる、という習わしがあった。
ものを大切にする心を養うための指導、ということであった。
四月の始業式の日に生徒が自分の椅子と机と荷物を持って新しい自分のクラスの教室に移動するのだ。
教室の配置は最上階が一年生、その下の階が二年生でさらにその下の階が三年生だった。
全校生徒が校内放送から流れる指示に従って机の上に椅子をひっくり返して乗せてそれを両手で持ち上げながらどやどやと階段を降りていく。
三年生の教室にあった椅子と机は卒業生が卒業式の日に一年生の教室の階まで運んでいくだか何だかしたのだったと思う。
こんな危険で無茶な行事が起案され承認され継承されてきたことに気味の悪さを覚えたが、「ぼくも最初ここに赴任して最初に見た時はビックリしたよ!」「民族大移動だね!!」と嬉しそうに語る大人たちにとってはこれは一種の奇祭か何かぐらいの受け止めだったのだろう。
今でも続いているのだろうか…