咳をしても一人
…と詠んだのは尾崎放哉。
くしゃみが出やすい。
くしゃみをすると、一緒に住んでいるコザクラインコのポポちゃんが「ピッ」と必ず言ってくれる。
気配を察知してくしゃみをする寸前に言うこともある。
集合住宅に住んでいる。
外出先から帰ってきて、エレベーターに乗って部屋のある階で降り共用廊下を歩いていると「ピッ」と聞こえてくる。
すごい能力。
りんごが大好きなので、ほぼ毎日おやつにあげる。
「おいしい?」と聞くと「ピッ」。
これを繰り返していたら、だんだんとポポちゃんのほうから「プゥピィ!」(おいしい!)と言ってくれる。あんまり美味しくないりんごのときは何も言わずしゃりしゃり音を立てながら黙々と食べる。
音に敏感である。
お皿が触れ合う音を立てるたびに「ピピピッ」と怒られる。
食器棚からごめんごめんとポポちゃんに謝りながらお皿を出す。
料理用のタイマーの音や電子レンジの音はほぼリアルに再現できる。
自分の周りに誰も人が見当たらない時は「ピピッ(どこにいますか?)」と声を掛けてくる。
出かけて帰ってきて玄関のドアを開けると「ピッ!(おかえり!)」と言ってくれる。
晴れた朝にはカーテンを開ける前から起きて起きてと飼い主にアピールをする。
ケージの入り口を開けると飛び出してきていつもの定位置に飛んでいく。
定位置は梁と食器棚との間の縦15センチくらいのわずかな隙間。横には1メートル以上ある。
そこがポポちゃんのテリトリー。
ずっと前から狙っていた場所。
セキセイインコのピコちゃんがいた頃はふたりとも基本的には自分のケージにいることが多かったけれど、ケージの外にいる時はポポちゃんはよくその場所に行っていた。
テリトリーで行ったり来たりトテトテトテトテ楽しそうに走ったり、お昼寝したりする。ごはんもそこで食べる。夜眠る時以外はほぼテリトリーにいる。
キッチンペーパーの芯が大好き(?)で、見せると飛びついたり穴に頭を突っ込んだり、芯を動かすとものすごいスピードで着いてくる。
身体能力おそるべし!!
大腿部骨折をしたことがあった。
もうヒトで言えば80歳を超えていたので獣医さんも「手術はちょっと…」ということで様子見になった。
しばらくケージの下の方で療養していたが、ある時いつもの定位置に飛んでいった。
獣医さんは「あまり飛んだりさせない方が…」と言っていたが、もうポポちゃんの好きにさせてあげると、メキメキ元気になってきて、トテトテトテトテができるようになった。
トイレの場所も自分で決めて、食べ物決して変なものを口にしないし、家の外にも出て行かない。賢くて自立したところもある。
小さな頃に一度、何かの拍子に家の外に出てしまった。気づかずにいたら、どこからかポポちゃんの呼び鳴きがするなぁと思ったらベランダの洗濯物の洋服のポケットの中だった。
困って助けを呼んでいたのだろう。
東日本大震災の時にもコロナ禍にもずっとこの家にいてくれたポポちゃん。
3日前、突然虹の橋を渡ってしまった。
ひとりケージの中で。
今朝、くしゃみをした。
「ピッ」が聞こえなかった。
ああ、もういないんだ。
テリトリーの食器棚の上もがらんとしている。
トテトテトテトテも聞こえてこない。
ああ、本当にもういないんだ。
なんか家の中もしんとしちゃってるよ。
15年も一緒に暮らしてくれて本当にありがとう。
長々とヒトの暮らしに付き合わせちゃってごめんね。
ポポには本当にお世話になったよね。
でも本当はまだポポがいないことがよくわかんないんだ。
ポポ、とか、ポポちゃん、とか、ポンポコリンちゃん、とか、おポポちゃん、とか、ポッちゃん、とか、おポッちゃま、とかいつもみたいにいろんな名前で呼びかけちゃうんだ。
時々ポポの声も聴こえちゃうんだ。
でもいいよね。
まだいるんだから。
ね。
どこにいるのかな。