へっぽこるみ日記。

毎日毎日日が暮れる。半期に一度の即興ピアニストのつれづれ。

8月15日。

父が二歳の時、父にはお父さんがいなくなった。

ビルマで戦に倒れた。

 

父は定年後間もなくあの世へと旅立った。

最期まで自分の父親の面影を黙々と追い続けた。

どんなに父親を見たかったろう。

どんなに父親を感じたかったろう。

どんなに父親と話したかったろう。

どんなに父親を求めていたろう。

写真でしか知らない父親を。

軍服を着た写真の姿しか知らない父親を。

 

わたしも祖父に会いたかった。

普通の服を着ている祖父を見たかった。

カラーの祖父を見たかった。

立体の祖父を見たかった。

背の高さはどれくらいだったんだろう。

動いている祖父を見たかった。

どんな声をしているのか聞いて見たかった。

 

何が国を戦争に巻き込んでいったのか。

誰が国を戦争に巻き込んでいったのか。

何故国を戦争に巻き込んでいったのか。

どのように国を戦争に巻き込んでいったのか。

 

会うことのなかった祖父を思うたびに考える。

 

戦争なんてふざけた事に国民を巻き込みやがって。

 

今年も終戦記念日が来た。

年号が変わろうが何があろうが終戦記念日は終わらない。

 

遠足は家に帰るまで遠足です。

家に帰ったら終わりです。

戦争はどこまでも戦争です。

停戦しようが終戦しようが終わることはありません。

脳内日記 その七。

こんなに暑いのに暦は立秋。

なるほど夜には虫の声に秋の気配が宿るようになった。

時は過ぎて世界は回る。いや、時は過ぎるのではなく砂時計のように積もって重なっているのだとも言われている。

まあいずれにしてもどうもこのところなんだかつまらないなぁと思っていた。

ああ、つまらないつまらない…と思いながら平日昼間の各駅電車に乗っていた。

前の座席にメガネをかけた男が座っていた。

年齢不詳、といったところか。

すると、その男が手持ちの黒い年季の入った革鞄から徐に眼鏡拭きを取り出した。

それから眼鏡を外した。

さらに片方の目玉を外した。

そして眼鏡拭きで目玉を拭った。

ほほう、そう来たかぁ…

「眼鏡拭きで目玉を拭くんですか?」

考えるより先に言葉が出ていた。

「ああ、これ?眼鏡拭きだと思うでしょ?違うんだな。目玉拭きなんだ。」

とドヤ顔で男は答えた。

「へぇ!目玉拭きなんてあるんですね!眼鏡拭きとどう違うんですか?」

「触ってみればわかるよ」

男が目玉を拭いた布をうかうかと触っていいものか躊躇した。

「あ、そんなこと言われても触りにくいよね。でも触ると一目瞭然なんだけどな」

こういう時は一目瞭然って言わないんじゃないかと思ったがそれよりも目玉拭きなるものが気になった。

「では失礼して…」

触って見ると、天女の羽衣のように柔らかで滑らかだった。羽衣を触ったことがないがそう思った。

「ね、凄いでしょこの触感!」

と屈託のない笑顔で男は言った。

目玉を丁寧に拭って眼窩に戻し、今度はもう片方の眼球の清掃に取り掛かった。

一連の動作を食い入るように見ていた。

「こうするとね、目をつぶった時にウヨウヨ見えるやつとかが消えるんだよ」

それはいい、と思ってしまう自分がいた。

両の眼球を拭き終えた男は目玉拭きを鞄にしまって、また違う布を取り出しその布で眼鏡のレンズを丹念に拭った。

「目玉だけ拭いても眼鏡のレンズが汚れてたら案配がよくないもんね」

「ですよね…」

 

男は西調布の駅で降りて行った。

 

サマータイム。

早起きが嫌いで仕方ない。

春夏秋冬早起きは嫌いだ。

サマータイムで2時間時間を早められたら体にも心にも差し障りがあることこの上ない。

口は乾くし心拍は上がるし気は鬱する。

ただでさえ酷暑で生存が危ぶまれているのにそこにサマータイムで早起きさせるとは国を挙げての嫌がらせとしか思えない。

サマータイムよりウィンタータイムの導入を検討しないものか。

寒い早朝に起きるのは体にも心にも差し障りがあることこの上ない。

口は乾くし心拍は上がるし気は鬱する。

2時間遅らせると…朝の7時に起きるのが9時に起きればいいことになる。

これはいい。

夏にはサマータイムよりシエスタ導入だ。

そして夏のヴァカンスの制度化。

ベーシックインカム制度も導入。

まったりゆったりいこうぜ、ニッポン。

脳内日記 その六。

明大前から京王井の頭線渋谷方面に向うのに急行に乗った。

下北沢を過ぎると次は終点渋谷だ。

休日の車内は混んでいた。

車内の灯りがいつもより煌々として見える。

最後尾の車両の一番後ろに進行方向を向いて立っていた。

乗り合わせた人々の横顔がズラズラ並んでいた。

これだけいるのに誰も知った顔がなかった。

それにしても渋谷はまだか。

電車は恬淡と進んでいた。

随分と走ったようだが一向に渋谷へ着く様子がなかった。

見知らぬ人々の横顔や走り去る風景を見ながらふと考えた。

この電車、実はあの世に向かっていたりして。

するとこの人たちと自分は一緒に逝くのか。

あの世にはやっぱりいるんだろうな、神様が。

神様に会ったらどうしよう?

初めましての挨拶と名前でも伝えればいいだろう。

そして神様の部屋にもしピアノがあった即興で弾いて差し上げよう。これといって気の利いた手土産も持ち合わせていないし。

あの世に行く時って案外こんな感じなのかもしれない。

前もって準備をするというよりは気づいたら電車に乗っていて…みたいな。

 

「ご乗車お疲れ様でした。次は終点、終点です。この電車はこの後車庫に入ります。どなた様も降り遅れのないようお願いいたします。」

車内アナウンスがあった。

終点か。

やっと着いた。

渋谷のホームのつもりで降りたものの何となく

いつもとちがってぼんやり仄暗かった。

駅員がいたので聞いてみた。

「ここ渋谷駅ですよね?」

「いや、終点ですよ、終点。」

「だから渋谷ですよね?」

「いや、渋谷じゃなくて終点ですよ。」

「終点?」

「はい、終点です。人生お疲れ様でした。」

と言って駅員は深々と儀礼的に頭を下げた。

「じ、人生、お、お疲れ様でしたぁああ?!」

「そこの改札を出て右に曲がるとエスカレーターがありますので降りていただいくと横断歩道がありますのでそこを渡って左に行けばすぐに役所がありますのでそこで転入の手続きをなさって下さい。」

「え…とりあえず明大前に戻りたいんですけど…」

「それも役所の方でご相談いただいたほうがよいかと思います。」

仕方がないので改札を出た。

自動改札はパスモですんなり通れた。

エスカレーターを降りて言われた通りに行くと役所に着いた。

総合案内のところで用件を言うと

「転入ということでしたらそこの戸籍課へいらしてください。」

「明大前に戻るにはどこで相談したら…」

「戸籍課の横に相談窓口がありますのでそちらでご相談されるとよいかと思います。」

相談窓口は混んでいたので順番待ちの発券機で番号をもらい待っていた。

ふとある冊子が眼に着いた。

『転入あるある』というタイトルで転入に際してよくある質問と答えが載っていた。

「Q:明大前に戻るにはどうしたらいいですか。

A:申請用紙に必要事項を記入の上、戸籍課復活係へ申請して下さい。認可されるまで最低100年かかります。」

かわいそうに。

やりたい放題延期騒動は台風のせいで仕方なかったとはいえ自分にとってはかなりダメージだったようだ。

たしかに本番当日に向けて精神レベルを調整してきたからね。

それにしてもどうもわたしは相当ガッカリしていたようだ。

当日の午前中はいじけてベッドから起き上がれずふて寝をしていた。パラレルワールドではちゃんとやりたい放題を開催している自分がいるから大丈夫だと限りなくリアルに感じるなど思考がかなり混乱していた。

このいじけ具合を自分の意志ではどうにもコントロールできなかった。

こんな経験は初めてかもしれない。

その次の日も一日中ベッドの上で本を読んでいた。

さらに次の日…

お風呂あがりにふと白髪のチェックをしたくなった。

鏡を見ながら頭髪を掻き分けているとなんか見慣れないものが視界に入った気がした。

なんだこれは?

さらによく見てみるとそれは頭皮における頭髪の空白部分だった。

しかも円形を成していた。

大きさはおおよそ500円玉、というところか。

昨日まではなかった、というか、気づかなかった。

さらによく見ると毛根は存在していた。

白髪の髪が一本だけその地帯に生えていた。

白髪って強いんだな。

これが巷でよく言う円形ハゲ、というものか。上品にいうと円形脱毛症。

ふて寝している間に頭を枕にくっつけ過ぎたのだろうか。

とにかく、おやまあ、なんてかわいそうに。

そうだったのか。

そんなにまで思っていたんだね。

10円玉では済まなかったくらいだったんだね。

100円玉でも済まないくらいだったんだね。

千円札にならなくてよかったよ。

ありがとう。

そっかそっか。

かわいそうだったね、自分。

9月は思いっきり弾こうね。

箱入り娘たち。

やりたい放題第6弾が台風で延期になった。

延期の通知が徹底しているか確信がなかった。

万が一どなたかお客様がいらしたら…と。

Yukkoさんと相談して、開演予定だった5時前から会場で待機していた。

会場のオーナーさんとご好意で控え室のような部屋にいさせてもらった。

半地下になった部屋なので外の道路を歩く人の足元がガラス越しに見えた。

ソファに座って二人でとりとめのない話をしながら過ごした。

二人とも年齢はさておき箱入り娘なので家の人に「台風でも出かけるの?」と心配されていた。

一時間ほどいたが特に人の来る様子はなかったので引き上げることにした。

雨風の中、幡ヶ谷の駅まで向かった。

いつもならちょっとごはんでも…となるところだったが台風だし箱入り娘なのでそれぞれ家路につくことにした。

Rumi&Yukkoやりたい放題vol.6開催延期のお知らせ。

いつもRumi&Yukkoのやりたい放題シリーズを応援していただきありがとうございます。

 

2018年7月28日(土)に開催を予定しておりましたRumi&Yukkoのやりたい放題vol.6ですが、台風12号接近について気象庁による注意喚起の会見が開かれたり開催時間帯がちょうど台風直撃と重なる予報が出されたりという状況です。交通機関等への影響も懸念されているようです。

ご来場の方々の安全等を考えましてやむを得ず開催延期とさせていただくことになりました。

直前の変更で大変申し訳ありませんがどうぞよろしくお願いいたします。

なお延期日時は

9月22日(土)17:00開演(16:45開場)

会場は同じくKMアートホール(京王新線 幡ヶ谷駅)です。

 

Rumi&Yukko

岡本留美