へっぽこるみ日記。

毎日毎日日が暮れる。半期に一度の即興ピアニストのつれづれ。

正常性バイアス?創造の地平??

ピアノの音がヨレっとして来たのが二月ほど前からだったか。

半年に一度くらいのペースで調律してもらっている。

そろそろそんな時期かとも思ったが、それにしてもヨレヨレ具合が実に甚だしい。

こんなにヨレヨレしたことはなかった。全てのキーがヘベレケなのである。

一音弾いても、3度を弾いても。5度や8度など弾いた日には三半規管がやられたような目眩のような感覚になる。和音を弾いても和音にならない。

当初は実に気持ち悪い音程のズレの嵐に戸惑い辟易していたが、次第にそれが面白くなってしまった。

ヘロヘロのピアノの音には敢えて音程を不安定にしているギターのような歪んだ風合いに似た独自の味わいがある。

そういえば以前、調律してから間の空いているヨレンとした音が好きな時期があった。それが調律してもらうとユーズド感のあるジーンズにアイロンをかけたようになってしまいがっかりした気持ちになることがあった。

そんな気分を久々に思い出す。

 

「そろそろ調律の時期ですが…」

と調律さんからお電話があった。

来てもらうことになった。

 

調律さんは都内の音大のピアノや日本中のいろんなホールのピアノや演奏会のピアノを調律している人だ。調律や調整の仕方が絶妙な人だ。スーパー職人どころではない。お話ししていても楽しい。そんな調律さんに出会えて幸運だ。

 

さて、調律さんがやって来た日のこと。

ピアノの狂い方がハンパなくて…と切り出す。「音大のピアノもね、二ヶ月前に調律したのにすごく音の狂ったピアノが結構あって(変だなと)他の調律の人とも話してたんだよ」と言う。気候変動が激しいせいじゃないか、ということだ。

 

最初は気持ち悪くて弾く気がしなかったけどだんだんこの音もアリだな、と思って…と言ったら「これはないよ」と苦笑される。「まあジャズとかではあるかもね」

 

調律さんの調律は時間にするとだいたい4、5時間。

「ちょっと弾いてみてくれる?」

と、調律さんがピアノの部屋から出てくる。

「ピアノ本体かと思って、響板にひび割れがないかとピアノの下に潜ってみたりしてんだんだけどピアノは大丈夫だったよ」

 

今回もたっぷりしっかり調律してもらって、ピアノはすっかりご機嫌ちゃんだ。

こんなにいい音だったんだね、君は。

ああ、弾きやすい弾きやすい。心から聴きたくなる。音がいいと即興も変わってくる。

調律さんに心から感謝。