rumipianoのへっぽこるみ日記。

即興ピアニストrumipiano(岡本留美)のブログです。日々のつれづれ、脳内日記(創作日記)、演奏会情報などを載せています。YouTube公開中(『youtube rumipiano』で検索)。ホームページは「rumipiano ホームページ」で検索するとご覧いただけます。お問い合わせはrumipianosokkyo@gmail.comまで。

脳内日記 其の十三。

このところ夏が半端なく暑くなっている。

うかうかしていると淘汰されてしまいそうだ。

 

ホームセンターに行った。

猛暑対策関連グッズのコーナーが大々的に展開されていた。

いろんなグッズがある。

冷感枕、冷感枕カバー、冷感掛け布団、冷感掛け布団カバー、冷感スリッパ、冷感クッション、冷感箸、冷感グラス、冷感シャンプー、冷感トリートメント、冷感石鹸、冷感歯磨き粉、冷感歯ブラシ、冷感手ぬぐい、冷感トートバッグ、冷感傘、冷感靴下、冷感フライパン、冷感包丁、冷感鍋、冷感収納ボックス、冷感ショッピングカート、冷感食器棚…

 

過酷な夏を乗り切るためにとりあえず冷感包丁、冷感歯ブラシ、冷感枕、冷感枕カバー、冷感掛け布団、冷感掛け布団カバーを買った。

なかなかの出費だ。淘汰されないためには背に腹は変えられない。

 

夏に料理するのは本当に暑い。

冷感包丁は柄の部分がひんやりしているのでありがたい。

冷感歯ブラシも持ち手が冷たいので心置きなく磨ける。

枕、掛け布団などの冷感寝具も快適な眠りを保証してくれる。

中でも枕がすごい。

枕に頭を沈めた途端にひんやり心地よい冷気に包まれる。

これはいい。

熱帯夜にも関わらず毎晩快適な睡眠堪能していた。

 

冷感グッズのお陰で順調に夏を過ごしていた。

けれども今日、ちょっと変わったことが続いた。

通勤電車に乗っていた。

空いている座席はなかったのでつり革につかまって立っていた。

すると、同じく左横に立っていたご婦人が

「座ってもよろしいでしょうか」

とわたしが立っている前の座席を指差して聞いて来た。そこには既に女子高校生が座っている。

「え…あ…ど、どうぞ」

「では失礼」

と言ってご婦人は席に着いた。

同時に女子高校生はすっと消えてしまった。

 

あの女子高校生は何だったんだろうか?

 

仕事を終え、疲れたので食事をしてから帰ることにした。

蕎麦屋で蕎麦とカレーのセットをいただく。

このセットはいつ食べても美味である。小さいながらサラダもついているのがまたいい。

食べ終わり一息ついてからレジに向かった。

レジには三人並んでいた。

先頭の人が会計を済ませた。

二番目の人が会計をするのを待っていた。

するとレジの人が

「お次の方どうぞ」

とわたしを満面の笑みで見ながら言った。

「え、あ…はい」

二番目の人はいつのまにか消えていた。

 

ああ、何なんだ。

何が起こっているんだ??

 

片付かない気持ちのまま家に帰った。

顔を洗い、着替えをして手持ち無沙汰にテレビをつけた。

野生の猿が民家を荒らして困る、というニュースをやっていた。

コメンテーターが三人出ていた。

山口真紀子さん、大沢慶喜さん、小寺まいさん。

山口さんは弁護士だったっけ。 

大沢さんは確か教育評論家だったかな。

小寺さんは…初めて見たなぁ…

司会のアナウンサーがまず山口さんにコメントを求めた。

「そうですね…山間部の人口が減ったから野生の猿が活動しやすくなったのでしょうか」

「ありがとうございます。では大沢さんはいかがでしょうか」

「自然環境の変化で猿も暮らしにくくなったのかもしれませんね」

司会のアナウンサーが「お二方のご意見からもいろいろなことが見えて来ますね。では次のニュースです」

あれ?小寺さんに聞かないんだ。

じゃあ次のニュースで何かコメントするんだなきっと…

そしてアナウンサーは夫婦別姓が経済効果を落とすという政府見解が発表されたというニュースを伝え、また山口さんにコメントを求めた。

「名字を変えることを簡単に考えすぎです」

「確かにそうですよね。では大沢さん、いかがでしょう」

「例えば親が離婚した時に子どもがどちらについて行くかで子どもの名字が変わってしまうのは子どもにとってもよくないと思うんですよね」

「お二方のコメント、ありがとうございました。やはりいろいろなケースを想定して慎重に考えていく必要があるように思えますね。さて次のニュースは…」

番組の最後まで見ていたが、小寺さんに発言を求める場面は一度もなかった。

ついにアナウンサーが「今日は山口真紀子さん、大沢慶喜さんにお越しいただいました。ありがとうございました。」と番組を結んだ。

え?!小寺まいさんは??え??

 

もやもやした気分でお風呂に入って冷感歯ブラシと冷感歯磨きで歯を磨いて寝床に入った。

冷感枕で今夜も変わらずひんやり冷気に包まれた。

それにしてもこの枕、何でこんなにひんやりしてるんだろう。冷感掛け布団はそんなでもないのになぁ…

一度は部屋の電気を暗くしたものの、今朝の電車での出来事とさっきのニュースのことか頭に浮かんで目が冴えてしまった。

したかなく部屋の電気をつけてぼんやりあたりを見回した。

本やCDなどで雑然としていた。

整理しよう。

明日は仕事ないし。

片付けていると、なにかが一冊の本に挟まっていた。

冷感枕についていたタグだった。

捨てていなかったんだっけ。

タグを眺めた。

「霊感枕。これひとつで熱帯夜でもひんやり」

と書いてあった。

れ、霊感?!?!

「使用上の注意。稀に霊感がアップし過ぎて体調に変化が出ることがございます。その場合は直ちに使用をやめ医師にご相談ください」

なるほど。

冷感、じゃなくて、霊感だったのね…

まあいまのところ具合も悪くないしひんやり加減がいいからこのまま使うことにしよう。

 

次の日、霊感枕を買ったホームセンターに行った。

冷感グッズのコーナーを見てみると枕がたくさんあった。

一見うちにある枕とそっくりなのだがタグを見るとどれも「冷感枕」となっている。

 

午後から友達が部屋に遊びに来た。

わたしの寝床を見て

「あれ、枕使わない人なんだぁ」

と言った。

「え、あるじゃんそこに。ひんやりしてすごく寝やすいのよこれ。」

「えー、何言っちゃってんのぉ〜まったくもーう。どこにもないじゃん、枕なんて」

 

そっか。

電車の中の女子高生も、蕎麦屋のレジに並んでいた二番目の人も、小寺まいも、霊感枕もほかの人には見えないんだ。

ぐふふふ。