へっぽこるみ日記。

毎日毎日日が暮れる。半期に一度の即興ピアニストのつれづれ。

脳内日記 その五。

雑貨屋に入った。

北欧雑貨やウズベキスタン雑貨、火星雑貨、天王星雑貨など品揃えが豊富だった。

その中になかなか使い勝手の良さそうなエコバッグがあった。手触りもいいし軽くて持ちやすそうだった。しかも鬼太郎の父さんみたいな目玉が真ん中にどーんとデザインされていた。目玉の右下に例の腕でハグしているみたいな図柄でecoという文字が入っているエコマークが付いているようだった。

「これお願いします」

「ありがとうございます。なかなか人気があるんですよ、これ」

来た来た、鉄板セールストーク

「せっかくだからもう使っちゃいます。」

「じゃ、商品のタグをお外ししますね」

「はい、お願いします」

持って来ていた布バッグを畳んで中身をそのエコバッグに入れてウキウキ歩いていた。

すると向かいからきた初老の男がいきなり

「お前、自分のことばっかり考えてんじゃねぇぞこの野郎!」

と私に怒鳴ってきた。

「え、な、い、いきなり何ですか」

「だから言ってんだろ、自分のことばっかり考えてんじゃねえって。何度も言わせるなこのすっとこどっこい」

そう吐き捨てると男は何事もなかったようにすたすたと歩き去った。

何だったんだ、一体。

見ず知らずの男になんでそんな物言いをされなくちゃならないんだ。

気を取り直して歩き始めた。

すると今度は向かいから今度は犬を連れた女性がやってきた。

すれ違いざまに

「うぅぅぅぅわわわわわわわん!ガルルルルゥーわんわんわんわんわおーん!」

と犬が歯をむき出して私に吠えかかってきた。

「あら、ロドリゲス随分怒ってるわね。ごめんなさいね」

「いえ、いいんです」

「でもこんなこと言っちゃなんだけど…あなたが自分のことしか考えていないからいけないのよ」

「じ、自分のことしかって…わたし何かしました?」

「ほーら、そうやって開き直るところがまさにそう。あら大変、もう行かなくちゃ。では失礼」

なんだなんだなんなんだ。

あの男といい犬といい犬の飼い主といいいきなり訳の分からない説教を出会い頭にしてくるとは。

とっても疲れていたのでとっとと家に帰った。

 

腑に落ちない心持ちで半分上の空で作った夕飯を食べていると携帯が鳴った。

友だちのポポ子からだった。

「今近くまで来てるの。ちょっと寄っていい?」

「いいよ。お茶ぐらいしかないけど」

「じゃなんかお菓子でも持ってくよ」

 

鳩サブレーを持ってポポ子がやってきた。

「んもう今日すごく変なことがあったの」

とわたしは我慢できずに切り出した。

「なになに?」とポポ子が口一杯に鳩サブレーを頬張りながら言った。

「知らないおじさんやおばさんに通りすがりに『自分のことしか考えるんじゃない』っていきなり説教されたのよ。ひどくない?おまけに犬まで因縁をつけてきて…」

「へーなんでだろね」

「こっちが聞きたいわよ」

「おっ、このバッグいいねぇ、目玉が付いてて」

「いいでしょ。駅前に新しく出来た雑貨屋で買ったの」

「あの店面白いもんありそうよね。ん?あれっ?このバッグ…」

「そう、エコバッグ。どうかした?」

「いや、よく見てみ。これ違うよ、エコバッグじゃないよ」

「だってエコマークまでついてるじゃん」

「だーかーらー…違うよこれ。エコマークじゃない。エゴマークだよ」

エゴマーク??」

「すげー!初めて見た!エゴマーク!!ほらここ、ecoがegoになってる、ハハハ」

「あ、ほんとだ。でもなにそれ?」

「知らないの?」

「ポポ子知ってるの?」

「聞いたことあるんだ。でも都市伝説みたいなもんかと思ってた。ほんとにあるんだぁ!」

「なに、それ、エゴマークって?」

エコマークの中に稀に混ざっているんだって。千分の一くらいの確率でね。すごいなぁ!だから怒られたんだよ、『自分のことばっかり考えてんじゃない』って。エゴバッグを持ってるだけで罵倒されるらしいから」

「なるほど。だから怒られたのかぁ…でもあの人たち、それに犬までなんでわたしがエゴバッグを持ってるってわかったのかしら?」

「エゴバッグ専門の目利きがいるらしいよ。ボランティアでさりげなく町中をパトロールしてるんだって。目利きになるには3ヶ月くらい市役所で研修を受けるとか言ってたよ。警察ではパトロール犬も養成してるんだって。」

「そうなんだ。でもエゴバッグなんてこんなものいらないよ。持ってるだけで怒られるなんて。返してこようかな?でもこれバーゲン品だったから返品きかないんだよな。じゃあポポ子にあげる」

「いらないいらない。押し付けるな。」

「じゃあどうすればいいのかな?」

「神社で引き取ってくれるとか聞いたけど」

「へぇ!そうなんだ!!」

明日朝イチで神社に行ってこよう。