大好きな彼。
円らな黒い瞳のキリッとしたイケメン。
わたしより年下。
多分八等身くらいあるかな。
野性的だったりジェントルマンだったりツンデレだったり。
音楽好き。
声も素敵。
お話も上手。
とってもいいにおい。
服のセンスも抜群。
色合わせが本当にうまい。
だいたいご陽気。
結構気まぐれ。
そんな彼にわたしは毎晩囁く。
彼の温かい鼻に口を寄せて何度も囁く。
大好きだよー。チュッ。
彼はじっと聴いている。
わたしの唇に鼻をくっつけたままで。
なのに彼から「大好きだよー」と言ってもらったことは一度もない。
いつか言ってくれたらいいのにな。
愛してるとまでは言わなくてもいいからさ。
そう、彼は体も触らせてくれない。
無理に触ろうとするとギャイギャイ言う。
そのあとは過呼吸のようにハフハフしてしまう。
何か悪い思い出でもあるのだろうか。
大きな動物に襲われたような感じがするのだろうか。
首の後ろやほっぺのところを指でカキカキしてあげるのにな。
そんな彼も指には乗ってくる。但し左手の人差し指。右だと乗りづらいようだ。少し離れたところからピコちゃーんと呼びかけながら指を差し出すと飛んできて止まる。鷹匠ならぬインコ匠だ。ちなみにピコちゃんはセキセイインコ。
指を掴むピコちゃんの脚はとってもあったかい。体温高いからな。人間の体温計だとエラー表示が出るくらい。
モーツァルトや日本の民謡のCDをかけると、ピコピコピコピコ、ピコちゃーん、ピッコロリーン、おいピコ太郎!、ピコどした?、ピコたりんちゃーん、ロロロロ、わーピコちゃーん、いましたヨ…などとおしゃべりがスパークする。ベートーヴェンは反応がイマイチだった。
また明日の夜も愛を語ろう。