父が二歳の時、父にはお父さんがいなくなった。
ビルマで戦に倒れた。
父は定年後間もなくあの世へと旅立った。
最期まで自分の父親の面影を黙々と追い続けた。
どんなに父親を見たかったろう。
どんなに父親を感じたかったろう。
どんなに父親と話したかったろう。
どんなに父親を求めていたろう。
写真でしか知らない父親を。
軍服を着た写真の姿しか知らない父親を。
わたしも祖父に会いたかった。
普通の服を着ている祖父を見たかった。
カラーの祖父を見たかった。
立体の祖父を見たかった。
背の高さはどれくらいだったんだろう。
動いている祖父を見たかった。
どんな声をしているのか聞いて見たかった。
何が国を戦争に巻き込んでいったのか。
誰が国を戦争に巻き込んでいったのか。
何故国を戦争に巻き込んでいったのか。
どのように国を戦争に巻き込んでいったのか。
会うことのなかった祖父を思うたびに考える。
戦争なんてふざけた事に国民を巻き込みやがって。
今年も終戦記念日が来た。
年号が変わろうが何があろうが終戦記念日は終わらない。
遠足は家に帰るまで遠足です。
家に帰ったら終わりです。
戦争はどこまでも戦争です。
停戦しようが終戦しようが終わることはありません。