昨夜は寝しなにビル・エバンズの『From Left to Right』を聴いていた。
右を上にしてうつらうつらしていたら突然声がした。
「おばけきてるよ、おばけきてるよ」
高くもなく低くもなく中性的な声だった。
性別があるのかわからないけれど。
その声は右耳のとても近くで聞こえた。
あたかもおばけ自身が自分の来訪を教えてくれているようだった。
「おばけきてるよ」
すごく熱心に教えてくれているのに怖さと眠さで目が開かない。
「おばけきてるよ、きてるよ」
やっと目が開いた。
心臓をドキドキさせながら周囲を見回した。
コンポの正面プレートの表示だけが部屋を照らしている。
結局誰も何もいなかった。
いた気配も分からなかった。
何事もなかったようにビル・エバンズは弾き続けていた。
このCDにはヒトの声は入っていなかったと思う。
電化製品を通して霊的なものが語りかけてくる話はよく聞く。
さっきの声はスピーカーに乗って聞こえたのだろうか。
それにしても右耳にとても近かった。おばけが口を寄せて語りかけてくれた感じだった。
もしかしたら先日目黒の五百羅漢寺で左肩に乗ってきた何かが実は一緒に付いてきていたのか、一旦離れたがまた来たのか、それともまた別の何かなのか…
何のお構いもできませんで失礼いたしました。