近所のペットショップに行く。
わんちゃんねこちゃんコーナーには目もくれず小動物コーナーへと向かう。
今日もいるいるインコたち。
セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコ、アキクサインコ、ズグロハラシロインコ、マメルリハ…
あるセキセイインコに目を惹かれた。
よく見ると、セキセイインコの割には心なしか遠い目をしていて、これまたセキセイインコの割には落ち着いた風情であった。
「このセキセイインコ、なんだか遠い目をしてますね。それに落ち着きもあるし…」と近くにいた店員にそれとなく言って見た。
「あ、この子セキセイインコじゃないんです。ミニチュア宇宙人なんです。」
「ミ、ミニチュア宇宙人?」
「はい。最近人気が出てきて当店でも取り扱いを始めたんです。」
「そうなんですか」
「ええ。セキセイインコと間違われるお客さまが多いんですよ。よく似ていますからね。わたしも最初はわかりませんでした」
「てっきりセキセイかと…」
「セキセイインコは『宇宙人が地球に来た時の置き土産』とも言われているそうで、その大元がこのミニチュア宇宙人だそうです」
「なるほど」
「飼い方はほぼセキセイインコと同じで、餌もセキセイインコと同じです。鳴き声もかなり似ているのですが、セキセイよりはややエコーがかかったビブラートが入りますね。セキセイと違って小松菜やチンゲンサイなどの葉っぱは食べないんです。宇宙にはないですからね。そのかわりに…ちょっとお待ちくださいね」
と言うと小動物のグッズが置いてある棚の方へ向かい何か小さな袋を持って戻ってきた。
「これをおやつにあげれば喜んで食べますよ。これで栄養は十分です。」
これ、と言って店員が差し出した小袋には『ミニチュア宇宙人用隕石パウダー』と書いてあった。
しばらくミニチュア宇宙人を見ていた。
時折キョロキョロと辺りの様子を伺っては例の遠い目でじっとしている。
その佇まいを眺めているうちに離れられなくなった。
今、この部屋に鳥かごがある。
中にはミニチュア宇宙人が止まり木に佇んでいる。
ああ、もうこんな時間か。
時折思い出したようにぴゅるるる〜っと声を上げる。確かにエコーがかったビブラートが入る。
それを聴くと脳が痺れたようになる。
畏れ多くて名前が付けられない。
仕方がないから隕石パウダーでもあげよう。