朝の9時から府中の森芸術劇場入り。
こんなに早くから会場入りしてピアノ弾いたことないなぁ…と思っていると、「出演者がこんなに早くから来たら疲れちゃうよ」と調律さんに言われる。
大会議室をお手伝いスタッフさんと劇場のスタッフさんで手際よくコンサートホール仕立てにしていただく。
この部屋の窓の借景は実にいい。
会場のセッティングが一通り終わり、ひとり隣接の府中の森公園をぶらりとする。耳のイヤフォンからビル・エヴァンズの『Alone』を流す。
風が吹いていた。
草の上をわしゃわしゃ歩く。
ショートブーツにシミがつく。
あーあ。
お昼過ぎからリハーサル。
調律したてのスタインウェイを触ってみる。
弾きやすい。
その様子を調律さんが見ている。
「ちょっと手直ししていい?」
再び調律が始まる。
「ちょっと弾いてみて」
弾いてみる。
もっと弾きやすくなっていた。
すごいな。
「素音に近いです、会議室なもので…」と劇場の方が仰っていたが、実際はなかなか響きがあった。
即興用に持参したバードコールを鳴らしたら幾重にもこだましてびっくりした。
これなら大丈夫だ。
開場後は控え室に籠る。
書が掛かっていて壺も置いてあった。
よくわからないがちょっといい気になる。
窓から見える曇りがちの空から少し太陽がのぞいていた。
ウォークマンでビル・エヴァンズと坂本龍一と細野晴臣を少しずつ耳に注入。
ドアがノックされる。
お手伝いスタッフがお迎えに来る。
出番だ。
終演後、家に帰って気づく。
右手の人差し指が…
そういえば今日はグリッサンド(指の爪を揃えて鍵盤上を這わせて音をつなげる奏法)を結構使ったからなぁ…
グリッサンドに不慣れな頃は随分甘皮から血を流したものです。白い鍵盤に血がこびり付いている様はなかなかホラーなものがございました。
おしまい。