空気がひんやりして、そのひんやりした空気が鼻から目から耳から皮膚から入ってくると心身が調子を崩す。
今年もそんな時節になった。
喉がぼんやりして鼻の奥がカラカラ痛い。
耳は詰まったり鳴ったりしている。
「このまま喉の腫れを放っておいたら窒息して死んじゃうかもしれませんよ」と看護師に言われてステロイドの点滴を一時間くらい受けたのも数年前の今時分だったろうか。
喉の腫れが窒息死に至ることにも驚かされたが、更にびっくりさせられたのはステロイドの効用であった。
点滴ののち瞬く間におさまってしまった。
いや、おさまる、というより、現状復帰、という感じ。時間が戻る魔法のようだった。
副作用を取り沙汰されることの多いステロイドだが、この時ばかりは感服した。
ステロイドと言えば、塗り薬のステロイドを耳鼻科でもらったことがある。外耳炎を起こしていたその処方として。
一回塗布したらガサガサがつんつるりんになってしまって魂消た。
またある時、外耳炎になり、やけどでもペットの怪我でもよく効く「馬油」(ソンバーユ)をつけてみたらこれまたつんつるりんになってやはり魂消た。
鼻喉耳の不調を理由に日がな一日寝床で暮らす。
外は雨降りでどんより。
プロペラ機の音がよく聞こえる。
一年の溜まった疲れを体の奥に感じる。
『晴れたり曇ったり』(川上弘美)、『レンマ学』(中沢新一)、『分福茶釜』(細野晴臣)、『おばちゃんたちのいるところ』(松田青子)をパラパラと読んでいた。
昔ほどは頭の吸収力はないが、それでもどこか無意識のところにポツポツと読んだものが溜まっているのだろう。
若い頃の吸収力は砂漠に撒いた水(砂漠に水を撒いた経験はないが)のごとく、しかも雷に打たれたような(実際に雷に打たれたことはないが)であいの衝撃を伴っていた。
早く治るといいな、わが耳鼻咽喉。