ピアノの椅子。
アップライトの頃の椅子は赤いビロードの丸椅子だった。
かなり長い間使っていた。
回して高さを調節する。
回すと周りのフリンジが広がる様子が面白くてよく床に座って回して眺めていた。
わざとぐるんぐるん回して丸い部分が本体から抜けてぐったりと転がったりしていた。
グランドにしてからはベンチ型の黒い椅子だ。
そんなにふわふわしたタイプのものではない。
弾いているときにキコキコと軋みを立てる。
自分がぽっちゃりしているせいだと思っていた。
YouTubeの録音の中に聴こえる軋みは大方この椅子から発せられている。
未だ届かない特別給付金10万で、キコキコならない椅子を買おうかとも考えた。
そんなときに頭の中にあるワードが響き渡った。
「KURE55」
くれごーごー、だ。
魔法のようなスプレーだ。
動きが悪くなったものに吹き付けると大抵は元通りになる。
そうだ、KURE55をスプレーしてみよう!
ベンチ型の椅子の高さをとりあえず最大に調節してからひっくり返して床に置いた。
それからネジがあるジョイント部分や可動部分、果ては木と木が合わさった箇所やらに片っ端からKURE55を吹きかけしばらくそのまま置いた。
椅子を再びひっくり返して座って高さを調節して弾いてみたら…なんとうんともすんとも言わないのだ!
あんなに饒舌だったのに…
今日のYouTubeにはキコキコ音が入っていない。
すごいぞ、KURE55!
…だと思っていたら…KURE55-6でした。