ピンポーン、と玄関のドアチャイムが鳴った。
インターホンを取ると
「日本郵便です。ポチ信用金庫さんから書き留めです」
「は〜い」
ドアを開けた。
「こちら書留です」
「ありがとうございます」
「ハンコおねがいします」
いつもある場所にハンコが見当たらない。
「ごめんなさい、ちょっとハンコがなくて…」
その時、インコが部屋の中からピュルっと鳴いた。
「インコいるんですか?」
配達員が言った。
「ええ」
「もしハンコがなかったらインコでもいいですよ」
「え?」
「インコで」
「インコで?インコを渡さなくちゃいけないんですか?」
「いえいえ。インコの脚に朱肉をつけて押して頂ければ結構です」
「朱肉を?」
「はい。半年前ぐらいからハンコの代わりにインコでもよくなったんです。インコ専用の朱肉もありますので…」
こういうと、配達員は朱肉を取り出した。
「これ、インコにも害のない特別なものなんです」
「なるほど。ではインコでお願いします」
カゴの中でご機嫌でおしゃべりしているインコを連れてきた。
すると配達員はいとも手慣れた感じでインコを朱肉へと誘導して、あっという間に押印を終えるとインコの脚を拭いてこちらに寄越した。
インコは肩に乗って羽繕いを始めた。
「へぇ!すごいですね!!どんなインコでもいいんですか」
「小型、中型インコぐらいがいいのですが…大型インコでも大丈夫です」
また書留がくる日が楽しみになった。