友人が運営するピアノ教室の発表会のお手伝いに行ってきた。
会が終わり、片付けの段になってのこと。
発表会の会場は自治体の建物の地下のホール。
ロビーの端に備品置き場があった。
備品置き場の入口の扉は頑丈な鉄製でがっしりとしたドアノブが付いていた。
来客受付用に使用した案内板のキャスター付き縦型ホワイトボードを備品置き場に戻しに行った。
重いドアを開け、ドアが空いている隙にホワイトボードを滑り込ませ自分も中に入った。
同時にドアがガシッと閉まった。
漆黒の闇が訪れた。
しんとして全くの闇だった。
慌ててドアノブを探り当て持ち上げようとしたが微動だにしなかった。
もしかして内側からは開かないようになってるのかこれは。
おまけに呼べど叫べど聞こえそうもない密閉具合だぞ。
今日も明日もずっとここにいることになるのかもしれない。
捜索願いとか出されるかもしれない。
お腹空くだろうな。
生憎スマホも手元にない。
人生って一瞬であっけなく状況が変わるものだ。
それにしても本当に真っ暗だ。
音もしない。
闇の中に身体も意識も溶け出ていく。
あの世への通路ってこんな感じなのかもしれないな。
再びドアノブを探り操作してみた。
なんだ、簡単に開くじゃないか。
ドアノブがダメなら電気のスイッチを壁伝いに探してもよかったよね。
そもそも最初から電気つければよかったのに。
今もまだあの束の間の漆黒の余韻が私を捉えて離さない。