コンパクト・ディスクなるものが世に出始めたときの衝撃は忘れられない。
「わ、パチパチしない!!」
そう、音楽を聴いているときにパチパチが入らないのだ。
これで安心して音楽が聴ける、と思った。
レコードは傷や埃が針につっかかるといちいちパチパチいうのだった。
音楽を聴く時、それがもう気になって気になって仕方なかった。新品のレコードでもパチパチが入るのだ。レコードクリーナーなどでも埃は取りきれない。静電気が起きたら余計に埃が付いてしまう。なのでパチパチ音が全滅できない。
「あ、次のところ、パチパチ音が入るんだよな」
「休符なのにパチパチ音が入るから休符じゃなくなっちゃうんだよな」
「いいフレーズなのにパチパチ音が邪魔してくる」
など、ドキドキハラハラしながらの音楽鑑賞になってしまうのが常だった。
人の話は聞こえないふりを出来るのに、このパチパチ音だけはどうにもならなかった。
そんな悩ましいパチパチ音からわたしを解放してくれたCDはそれはそれは天晴だった。音の力はレコードの方が強いように思えたが、パチパチ音からの解放の安堵感はそれを凌いだ。
以降、手元の音源はすべてCDになり今日に至っている。
先日新宿のタワレコに行ったら、ワンフロアがすべてレコードに埋め尽くされている光景を目の当たりにした。
わ…
ここには確かクラシックとかニューエイジとかのCDがふんだんに置いてなかったっけか?
むむむ…
確かに老若男女の間でレコードが復活しているとは聞き及んでいたがここまでになっているとは…
「針を落として音が出るのがいい」
「音色が厚い」
「アナログでしか聞けない音がある」
などなど評価は高い。
確かにCDはデジタルデータだ。
でもパチパチしないんだよ、パチパチ。
寿命を全うするまではCD及びCDプレイヤーが存在することを祈ってやまない。
…とかいっちゃって、レコードが主流になったらターンテーブルとか買っちゃって「やっぱレコードだよね!」「このレコード、ジャケ買いしたけど当たりだったよ!」「針はナガオカだよね」とかやり始めるのだろうか。
こんなことばかり考えていられる平和が続くことを祈ってやまない。