伊勢丹府中店の閉店を知らされたのは一年前の今日。
しばらくは夜な夜なしくしく泣いていた。
それからはあまり考えないようにした。
府中伊勢丹が出来たのは23年前。
ちょうど地方公務員になったくらいの頃だったので伊勢丹で買い物ができるようになった。
それまでの府中にあった店では見たことのないような夢のある商品がたくさん並んでいてワクワクした。
そんな商品に触れていくうちに、自分のセンスも変わってきた。
顔見知りの店員さんも出来た。
買い物する楽しさを知った。
美味しいものもたくさん覚えた。
お正月や夏のバーゲンには家から小走りで出かけた。
仕事を変えてからは公務員の頃ほど大胆に買い物はしなくなったがそれでもちょくちょく通っていた。
なんだかつらいなぁと思うときも伊勢丹で買い物をするとスッキリした。
仕事で遅くなったら伊勢丹でご飯を食べたり、買って帰ったりした。
友だちとゆっくり話したいなぁと思った時は6階の端のカフェに行った。
いい気分になりたい時はちょっと素敵なお菓子を買いに行った。
気分や体調を崩しがちの母が喜びそうな食べものを買いに行ったりもした。
日常のいろんな場面で登場した府中伊勢丹。
家の近くに伊勢丹があるのが嬉しかった。
そんな伊勢丹が今日、ついに閉店。
見たこともない数の人が館内を埋め尽くしていた。
普段からこの人たちがかわるがわる買い物しに来てくれてたら閉店しなかったかもなぁ、などと仕方のないことを思ったりした。
閉店セールを狙って来ている人、デパートの閉店マニアみたいな人など普段は見かけないような感じの人たちもたくさんいた。
ああこれが見納めか、と思うとどこを見ても涙腺が緩む。
知り合いの店員さんが駆け寄って来た。
「残念ですよね…」
お互い我慢していたものが溢れてしまった。
ふたりで売り場で号泣してしまった。
それからはしくしく泣きながら人でごった返す館内を見て回った。
閉店間際に流れる「ふぁーみふぁーらーし♭ーふぁふぁー」という曲がいつもの倍ぐらいの音量で流れていた。
ああ、これをここで聴くのも最後か…
涙が溢れる。
閉店のアナウンスが流れる。
カーンカーンカーンカーンと鐘の音がなる。
二階の入り口にはものすごい人だかりができていた。
なんとなく流れて外へ出てしまった。
店内にはまだキャッシャーに長蛇の列。
しばらくすると店長が出てきて挨拶をした。
拍手が起きた。
挨拶が終わりしばらくすると建物の壁面にある「ISETAN」のブルーのサインが消えた。
ついにこの日が来てしまった。
今までありがとう、府中伊勢丹!