幼馴染みのまきちゃん。
ある日突然転校してしまった。
小学校高学年のころだった。
のっぴきならぬ事情があったのだろう。
まきちゃんはおもしろかった。
クリスマスが近づくと盛んに
「メリークリスマス、ホッホッホー」とサンタクロースの真似をしていた。
まきちゃんは絵がとてもうまかった。
図工の時間の出来事。
「三原色の絵の具だけで校庭の木を描く」という授業でまきちゃんはわたしの隣で大きな木を描いていた。
それは本当に木だった。
一方わたしのは古布のお化けのようだった。
先生がアドバイスをするのだがよくわからずもどかしくなったのだろう、わたしの手から筆をとって付け加え始めた。
そして先生はとなりのまきちゃんの絵を覗きにこう言った。
「あなた、三原色以外も使ったでしょ」
「使ってません」
「いや、それじゃなきゃこんな色は出ないから」
「使ってません」
…しばらく押し問答が続いた。
まきちゃんは「使ってません」と言い張った。
使ってないんだろうなと思った。
ある日、まきちゃんと公園のブランコに乗っていたら、変なやつらがいちゃもんをつけてきた。
「おい、ブランコ貸せ」
「やだ」
まきちゃんが応戦した。
「何だよそれ。おい、そっちのほうも」
と、やつらはわたしにも絡んできた。
わたしが気弱になっているとまきちゃんは
「『そっち』じゃないよ、『るみちゃん』って言うんだよ」
とわたしの代わりに請け負った。
変なやつらは離れていった。
まきちゃんは
「るみちゃんはわたしにはいつも強気なのにね」
と笑って痛いところをついた。
まきちゃんと「ピアノのレッスンごっこ」をやって泣かせた前科などがあったからだ。つねにわたしが先生役でまきちゃんが生徒役だった。
「学校ごっこ」をした時も同じキャスティングだった。
正義感が強く、絵が抜群にうまかったまきちゃん。
今頃どうしているかな…
絵を描いて豪快に暮らしてそうだな。