用事があって武蔵小金井まで。
ついでに以前から気にはなっていたが行く機会のなかった滄浪泉園のことを昨夜ふと思い出し寄ってみることにした。
中央線の武蔵小金井駅南口を出て右の方へ歩き左に曲がって道沿いを行くと着いた。
門の横に受付があった。
閉じられたガラス引き戸の向こうで受付のおじさんが熱心に手書きの数独に取り組んでいた。
少し眺めていたら気づいて、マスクをしてから窓を開けた。
「100円です」
と藪から棒に言われ入場料を渡すと、チケットをくれた。受付横にあるパンフレットを指さして「よかったら」と言われたので一部手に取った。かつてあったと思われるカラーの写真入りパンフレットを両面単色コピーしたものだった。
チケットも二色刷りでデザインも昔ながらのもので年季の入った匂いがした。
滄浪泉園とは崖線に沿って作られたどこかの金持ちの別荘だったところらしい。
滄浪は「そうろう」と読む。
「友達のお爺さんが手紙を書くときに最後を『候(そうろう)』で終わらせるんだって。そうろう爺いだね」と言って大笑いしていた大学の頃の友人をふと思い出した。
門を入ると石畳みの緩い下り坂になっていた。
その先は階段だった。
バランスを保つのが難しい階段だったのでゆっくりと下った。
降り切ったところには泉が広がっていた。
泉の周りを歩くと湧水があった。
触れてみると思ったより温かかった。
さらに歩くとまた違う階段に出くわした。
その階段を昇り切るとそこに待っていたものは…
水琴窟!!!
水を掬っては垂らして音を聴き水を掬っては垂らして音を聴き…と何度繰り返したことだろう。
自然なリズムと音程と宇宙につながりそうな響きに心細くなったりうっとりしたりしながら耳を傾けていた。
雨が降り止むまで洞窟の中で待っていた遥か遠い先祖の記憶が呼び起こされたのかもしれない。
幸いひとがほとんどいなかったので気兼ねなく味わえたのが嬉しかった。
水琴窟、また聴きに来よう。