久々に竹橋まで行った。
コロナ禍以降、とんと都内へは出なくなっていた。
竹橋の国立近代美術館で大竹伸朗の展覧会を観てきた。
年齢も国籍もさまざまないろんな人が観にきていた。
こういう普遍性を持つ何かを作り出す感性はすごいなぁと思う。
像を結んで意識の上に上がってくる手前のリアルな姿を表現しているのだろうか。
展示を見ている時に隣に居合わせた華奢な女性がいた。年齢は自分と一緒か少し上くらいだろうか。ショートカットで黒ベースのさりげない服装をしていた。
何度か隣になったのだが、不思議と安らいだ心地がした。
全く知らない人に対して、言葉も交わしたわけでもないのにこんな気分になるのは生まれて初めてだった。ふつうなら見知らぬ人と物理的に近づくのはむしろ不安になって落ち着くどころではない。
危うく「おもしろいですね、これ」とか何とか話しかけそうになったがやめておいた。
それからとりあえず最後まで展示を見て、全体像が何となく掴めたところでもう一度ゆっくりと振り返って見ようと最初のところに戻り絵をじっくりと味わって、次の場所へ移動しようと振り返るとまたその女性が後ろにいてその絵を見ていた。
それから後はもう一緒になることはなかった。
大竹伸朗の作品世界がそのような磁場を生み出していたのだろうか。
誰かといてあのような安らぎを感じたことは今までなかったように思う。
不思議な体験だった。