去年買った自転車。
24インチだか26インチかな。
買ったはいいが普段は歩いたほうが楽なのであまり乗る機会がなかった。
自転車はマンションの自転車置き場にある。
通りかかるたびに声をかけたりサドルをポンと叩いて挨拶するようにはしていた。
コロナウイルス感染拡大で外出を控えるようになった。
ルームランナーとか自転車漕ぎマシーンとかあったらいいなぁと思った。
母が「あんたの自転車持ってくればいいじゃん」と言い出した。
なるほど。
普段ならこんな提案は一蹴するのだが、気弱になっているせいかいいアイデアに思えた。
持ってきてみるか…
ひさびさに自転車の鍵を手に取った。
夜な夜な自転車置き場に赴き、自転車をひいてエレベーターに乗せようとした。
なかなか入りきらなくて難儀した。
自転車の頭をぐいっと曲げたらなんとかエレベーターに入り切った。フライパンで秋刀魚を焼くときに秋刀魚の頭がフライパンのへりにつっかかって捻挫したようになる、あの感じに似ていた。
家に自転車をお連れしてみると思いのほか貫禄があった。
一瞬ひるんだがすぐに慣れた。
丁寧に掃除をしたらピカピカになった。
自転車のカゴにリラックマとインコのぬいぐるみを入れてみた。
だんだん部屋に馴染んできた。
自転車の左側には仏壇が、右側にはセキセイインコのピコちゃんとコザクラインコのポポちゃんのおうちがある。
自転車漕ぎマシーンではなく本物の自転車を部屋の中で漕ぐことになった。
ピコちゃんがびっくりして大暴れした。
チリンチリンとベルを鳴らしてみた。
外で聴くより爽やかな音色だった。
人を不快にさせないような音色にちゃんとなっていることに驚いた。
ポポちゃんが喜んだ。
お尻のえくぼのところが痛いお尻のえくぼのところが痛いお尻の…と盛んに言っていた母も自転車を漕ぎ始めると痛みが改善した。
すごいな、自転車。
今では自転車を漕ぐとピコちゃんが歌いだすようになった。
もうすっかり家族の一員だ。