魚眼石を初めて目にしたのは東京の府中市にある郷土の森博物館の売店だ。
透明なタイプの魚眼石に惹かれた。
しばらくじーっと見てからその場を後にした。
家に帰ってからもしばらく気になっていた。
手帳のメモ欄に「魚眼石」と認めた。
他日、博物館に行った。
魚眼石はまだいた。
前回同様しばらくじーっと見てからその場を後にした。
家に帰ってからもやはり気になっていた。
また他日、博物館に行った。
魚眼石は依然そこにいた。
しばらくじーっと見てからその場を後にした。
家に帰ってからもどうも気になっていた。
こんなに気になるんだったら今度行った時に思い切って連れてこよう…
やがてコロナ禍がやって来て、博物館も休館になってしまった。
そして今日、久々に博物館に行った。
売店を覗いてみた。
あの魚眼石がいた。
しばらくじーっと見てからその場を後にした。
紫陽花がいい時期で、公園内にはたくさんの人出があった。
園内をそぞろ歩きながらもずっと魚眼石のことを考えていた。
散策の後、博物館の売店に戻った。
魚眼石のいるショーケースの周りを行ったり来たりしながらねっとりと見ていた。
よし。
「この魚眼石を見せていただきたいのですが」
と店員さんに声をかけた。
キラキラして綺麗だった。
お連れすることにした。
その夜、ピアノの譜面台に魚眼石を載せた。
魚眼石が聴いてるんだなぁと思いながら弾いてみた。