車の免許を持っている。
ゴールドカード。
そりゃそうだ。
夢以外では車に乗ったことのないペイパードライバーなのだ。
大学2年の時に教習所に通った。
所要45時間。
「あなたくらいの年齢だと大体27時間前後で免許を取るもんだけどねぇ…」
と言われた。
家にも車はないし、父もペイパードライバーだったし、車にあまりリアリティがなかった。
車のアクセルやらクラッチやらブレーキにピアノのペダルを見立ててイメージトレーニングをするもののさほどの効果はなかった。
免許の授与の時、教官が「あなたは乗らない方がいいかもしれないね。免許は身分証明に使うくらいにしといた方がいいよ」と言われた。
なるほどそうかもしれない、と思いドライバーの道は諦めた。まあ、いつか運転するパートナーを見つければいいやと思いながらうかうかしすぎて結局今も見つからず終いだ。
確かに車の運転ができたら便利だろうな。
ふらっと公共交通機関では行きづらそうな人気のない場所にもいけるし、車の中で音楽聴くのもいいだろうな…などとよく夢想していた。近頃は体が動かしにくくなってきた母も車があればいろんなところに連れて行ってあげられただろうにと不甲斐なく思ったりもしていた。
それがこのところドライブスルードライブスルードライブスルーと頻繁に目にしたり耳にしたりするようになった。
pcr検査がドライブスルー方式だの、築地の魚屋がドライブスルー方式だの…オンラインの次はドライブスルーか…
自転車の二人乗りやギターの弾き語りなどなんとなく簡単にみんながやっていることがなぜかわたしにはできないのである。
それよりピアノの即興演奏のほうが遥かに容易い。
元来実用性が備わっていないタイプなのかもしれない。