今日はピアノは弾かないでいいや、と思いながら梅雨空に任せてベッドに寝っ転がりぐでぐで本を読んでいた。
ある時寝っ転がりながら内田百閒を読んでいたら、「寝っ転がって読むのは読書ではない」という文章に出会ったことがある。私のこれまでの読書の大半はどうやら読書ではなかったようだ。
百閒先生には申し訳ないけれど、未だに寝っ転がって読書をしている。先生のご著書も拝読させていただいている。
電話が鳴った。
ピアノの調律さんからだった。
近くにいるのでピアノを見させてもらってもいいですか、という内容だった。
はい大丈夫です、とぼんやりした頭を置いたまま口が勝手に即答していた。
10分くらいで着く、とのことだった。
読書ではない読書をしていた部屋にピアノはある。
ピアノの埃を落とし、身辺を整理し、眉毛を描き、マスクをし、今季初めて冷房をつけ…などしていたら玄関先でピンポーンと鳴った。
ベッドカバーも掛けていないし、リラックマ御一行〜リラックマ、コリラックマ、キイロイトリ、ピンガ(ピングーの妹)、ふもふもさん(抱き枕)もベッドでくつろいだままであったがまあいっか、と自分に言い聞かせた。
「YouTubeのピアノの音が気になって気になって…」と調律さん。
そう、毎日聴いてメッセージをくれているのだ。
本当にありがたい。
二時間くらい調律をしてくれた。
「あとの細かい調律はまた正式な調律の時にね」と言ってさらっと帰って行った。
今日はやっぱピアノを弾いておこう、と思い直した。