坂本龍一さんがこの世からいなくなってしまった。
訃報が流れる二日前からどういう訳か坂本さんのアルバム(『1996』)をずっと聴いていた。
二週間くらい前にもこんなことがあった。
夜眠ろうとベッドに入った拍子に「コン」と床に何かが落ちる音がした。起き上がって確かめてみると小さな黒っぽいものが落ちていて。拾い上げるとそれは坂本さんのアルバム"async"のピンバッジだった。坂本さんの『設置音楽展』にを観に行った時に買ってきたものだ。しまってあったはずなのになぁ…。
坂本さんの音楽や本に意識的に触れ始めたのはここ10年くらいのことだった。なので「教授」呼ぶのはなんとなく照れくさい(坂本さんの音楽とのファーストコンタクトははるか昔の高校の頃の『戦場のメリークリスマス』だった。ふとした拍子にその曲を知り、ピアノで弾きたくて坂本さんの曲集を手に入れて弾いてみたが、当時の自分に消化する感性は育っていなかった)。
坂本さんのピアノや文章や対談の内容など不思議とスッと入ってくることが多かった。「その感じ、よく分かるなぁ」とか「よかった、これで合っていたんだ」とか…
"Playing the piano 2020"をCDで聴いた時は衝撃的だった。
どこかで望んでいた世界が全て入っていた。
南佳孝の初期のアルバム『South of the Border』は大変気に入っているアルバムで長い間聴き続けているが、アレンジとキーボードが坂本龍一だと意識したのは大分後のことだった。
世界中にある様々な音楽や音たちと公平に接する音楽性の豊かさと深さによってこの世にたくさんの宝物をものを遺していってくれた。
そんな素晴らしい音楽家が同じ時代にいてくれたことに感謝したい。
バッハやドビュッシー、日本なら武満徹のように後世に残る音楽家だ。
これからも迷った時の道標となり、弱った時のよるべとなり、共に生きていくのだろうと思う。
どうぞ安らかにお眠りください。